PR誌から、ずっと《エトランジェ》でありつづける

 夕方から台風の風が吹き始める。最高気温27℃、湿度が高い。

 書店に寄った時に、講談社のPR誌「本」10月号を頂く。毎月、早めに書店に届くPR誌だ。

 今年の出版界でのPR誌の話題といえば、KADOKAWAのPR誌「本の旅人」が七月号をもって休刊することになったことであろうか。「図書」9月号の巻末、「こぼればなし」に、この休刊について、今後のPR誌のゆくえについて記していた。

 さて、「本」10月号では、堀江敏幸町田康西川照子の各氏の文に注目した。

 「文芸文庫フェアに寄せて」へ、「ずっと《エトランジェ》でありつづける」というタイトルで堀江敏幸さんが、3ページのちょっと長めの文を寄稿している。

いくつになっても

 「トシヨリ生活の愉しみ」というサブタイトルがある中野翠さんの書下ろし新刊本を手にしています。タイトルは『いくつになっても』です。

 《森茉莉沢村貞子、対極にあるような二人。その間で揺れている私。うーん・・・・・・やっぱり私は、ぐうたら三昧の森茉莉さん寄りか。》

 プロローグ 茉莉さんと貞子さん

 アッパレな先輩たち

 美老人への道

 おすすめ老人映画

 バアサン・ファッション

 老後の愉しみ

 最後まで一人を愉しむ

 エピローグ

 巻末のエピローグに、文藝春秋藤田淑子さんから「シニア生活の愉しみ、といった本を作りませんか?」という提案をいただいて、書き始めたそうです。

 《書きながら、たびたび思ったことは、トシヨリというのは世間の中心からハズレた存在だけに、アナーキーであることが案外、許されるんじゃないの? 子ども同様、大目に見られるんじゃないの? 分別に凝り固まって、自分を抑えて生きて来た人たちでも、トシヨリともなれば、「お役目ごくろうさん」というわけで、もはや怖いもの無しというふうになってもいいんじゃないの?――ということなのだった。(はた迷惑にならない程度に)自分を解放したい。してもいいと思う。

 というわけで、子ども時代に好きだったことの「復習」のような提案が多くなりました。歳をとるってこと、私にとっては「子ども・・・・・・ただし知恵ある子どもに戻ること」のようです。》

 

「今週の本棚」から

 毎日新聞の日曜版で、「今週の本棚」に川本三郎さんが池内紀ファンにお勧めの本を紹介書評をしている。「この3冊」である。

 1、『カフカの生涯』(池内紀著、白水社Uブックス)

 2、『罪と罰の彼岸 【新版】 打ち負かされた者の克服の試み』(ジャン・アメリー著、池内紀訳、みすず書房

 3、『記憶の海辺 一つの同時代史』(池内紀著、青土社) 

 「この3冊」からの一部を引用すると、

 《ドイツ文学者の池内紀さんにとって、なぜゲーテやシラーを生んだ国がナチズムに支配されてしまったかは、大きな課題だった筈(はず)だ。

 2は、そんな池内さんにとって重要な仕事。レジスタンスに参加し、逮捕され、アウシュヴィッツなどの収容所に送られ、奇跡的に生還した思索者が、戦後、約二十年間の沈黙を破って発表した収容所体験記。これを訳した時は、「ドイツ語を勉強してよかった」と語っていた。この本が二〇一六年に復刊されたことは喜ばしい。

 このナチズムへの心の痛みをともなった深い関心は、近年の仕事、トーマス・マンを論じた『闘う文豪とナチス・ドイツ』(中公新書)と『ヒトラーの時代』(同)にも受け継がれている。そこにドイツ文学者としての誠実がある。》

 

罪と罰の彼岸【新版】――打ち負かされた者の克服の試み
 

 

 

 

 

 

左右より萩ひざまづく石に腰

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 ハギ(萩)の花が咲き、伸びた枝が風に吹かれていた。花は小さな蝶が集まっている風情だ。葉は三枚の楕円形の小さな葉で形をなしている。秋の七草。今が見頃です。

マメ科ハギ属の落葉低木の総称。山野に生え、葉は三枚の小葉からなる複葉。秋、蝶形の花を総状につけ、ふつう紅紫色。ミヤギノハギ、マルバハギなどがあり、特にヤマハギをさす。古くから庭園に植えられ、秋の七草の一。歌に鹿や雁と取り合わせて詠まれ、異称も多く、鹿鳴草(しかなくさ)・鹿の花妻・風聞草(かぜききぐさ)・月見草・庭見草などがある。胡枝花。からはぎ。  『大辞泉

 「萩一枝石に乗りゐてすがれけり

 「こぼれ萩受けてあたかも浮葉かな

 「左右より萩ひざまづく石に腰

 萩を詠んだ松本たかしの句です。

おかき事件

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 晴れて残暑がつづく。最高気温34℃。百日紅サルスベリ)の花が咲き出している。淡紅色で、青空を背にして風にゆれる。

ミソハギ科の落葉高木。高さ三~七メートル。幹は薄い紅紫色で皮ははげやすく、跡が白くなり、滑らか。葉は楕円形。夏から秋にかけて、しわの多い紅・淡紫・白などの六弁花をつける。中国の原産で、観賞用に栽培される。ひゃくじつこう。 『大辞泉

 朝吹真理子の新刊で『抽斗(ひきだし)のなかの海』を読む。

 吉田健一の小説、古井由吉大江健三郎後藤明生の『首塚の上のアドバルーン』、金井美恵子の小説をめぐる文を興味深く読んだ。

 「おかき事件」というタイトルの文章には、大笑い。

 《とあるイベントで大好きな作家の町田康さんに会ったときも、事の次第を話してから、おかきを差し上げた。町田さんは、おかき殺人事件みたいなはなしを書いたらええわ、と笑いながら言ってくださった。「おかき殺人事件」というフレーズが最高だったので、いっそ取材をかねてお見合いをすべきだったかと一瞬だけ後悔した。それでも、本当にお見合いをしたら、私が失踪する話になってしまったかもしれない。295ページ》

抽斗のなかの海 (単行本)

抽斗のなかの海 (単行本)

 

 

訃報におどろく

 池内紀さんの訃報におどろく。

 9月の筑摩書房の新刊で、注目したちくま文庫の一冊に、森毅著『森毅ベスト・エッセイ』がありました。その編者が池内紀さんでした。

 最近、目にした雑誌「望星」9月号の対談「にっぽん そぞろ歩き」が、三ヵ月ごとの連載対談で、川本三郎さんと池内紀さんの談話をいつも楽しみにしておりました。

 「山と渓谷」9月号で、「池内紀の山の本棚」が第152回『和菓子を愛した人たち』虎屋文庫編で、目にしたばかりでした。

 対談「にっぽん そぞろ歩き」

http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/pdf/1909_ren1.pdf

 

今月の新刊案内から

 今月も書店で、「ちくま」9月号を頂きました。

 いつものように筑摩書房の新刊案内を眺めています。

 9月の新刊で、注目した一冊が森毅著『森毅ベスト・エッセイ』であります。

 池内紀編とあるので、もしかしたら、以前、単行本で池内紀さんが編んだ『森毅の置き土産』という本の文庫本化でしょうか。

 これは、書店で確かめてみましょう。

 森毅さんの本を、この夏の読書で読んでおりました。再三読んでいる本なのですが、『ゆきあたりばったり文学談義』であります。ハルキ文庫版です。

 森さんが池内紀さんと交わした翻訳の話などもあるのですが、森さんの読書人生を語って愉快な本でありますね。

www.hanmoto.com

 

森毅の置き土産 傑作選集

森毅の置き土産 傑作選集

 

 

 

ゆきあたりばったり文学談義 (ハルキ文庫)

ゆきあたりばったり文学談義 (ハルキ文庫)