「白水社の本棚」より

 20日の二十四節気のひとつ大寒が過ぎても寒さの厳しい日がつづく。

 冬空の晴れ間にハクモクレン(白木蓮)の木がネズミ色のつぼみをつけていました。ビロードのような手触りの毛に花芽はつつまれています。

 触るとまだ硬いですね。

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 白水社のPR誌「白水社の本棚」2022年冬号が届いた。

 「愛書狂」(岡崎武志)、「いくたびも同じ書物を」(四方田犬彦)を読む。

 「愛書狂」は、新刊の『すごいトシヨリ散歩』の著者のひとり池内紀さんへの追悼回顧の文でした。『すごいトシヨリ散歩』は池内さんと親交が深かった川本三郎さんとの対談集です。

 

 

 

 

マスク同志向かひ合せてまじまじ

 朝、0℃近くまで冷え込んだ。雪混じりの風が吹き、最高気温は7℃。午後から青空が広がり、山茶花サザンカ)の木が満開で見ごろを迎えていた。近くに寄り花やつぼみを観察する。葉はつやがあり、葉っぱの縁にギザギザがある。

 ツバキ科の常緑小高木。九州・四国の山地に自生。葉は楕円形で両端がとがる。晩秋のころ白い花をつけ、散るときは花びらがばらばらに落ちる。種子から油をとり、材で器物を作る。園芸・観賞用としても栽培され、赤花・八重咲きなどの品種がある。  『大辞泉

 

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 「マスク同志向かひ合せてまじまじ」
 「マスクして残れるものの引眉毛」

 中村汀女の俳句で、昭和8年(1933年)の句です。

 

フレデリック・ワイズマン監督の映画『ボストン市庁舎』

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 一週間限定上映中のフレデリック・ワイズマン監督の映画『ボストン市庁舎』(2020年、アメリカ、274分、カラー)を観に出かけた。ワイズマン監督の新作はマサチューセッツ州のボストン市庁舎が今回の舞台である。映画館で入手したチラシによると、マサチューセッツ州のボストンはワイズマン生誕の地であるという。撮影カメラは市庁舎で働く人々とボストンの街の隅々で行われている市役所が市民へ提供しているサービスの様子を切り取っている。警察、道路の補修工事、ゴミの処理(ゴミ収集車がバリバリと家具などを呑み込んでいくのだった。)、新築住宅の建築現場の査察、地域のコミュニティで移民のつくる料理による高齢者支援の食事会、出産、結婚式などボストン市の提供する福祉サービス、低所得者の住む地域のショッピングセンターに大麻の店を出すという中国人移民の事業者と地域住民との住民集会の激しいやりとり、さまざまな人種と文化が共存している大都市ボストンを率いる市長と市の職員が取り組む仕事を撮影している。市長が、ボストンが変われば国を変えていくことができるという演説の場面など印象的である。274分の長時間であるが、途中、10分間の休憩があった。

 長時間のドキュメンタリー映画であるが、退屈することもなく興味津々で観ていました。面白かったです。

 ボストン市について、チラシより一部引用すると、

《米マサチューセッツ州北東部サフォーク郡に位置し、1630年に設立したアメリカで最も歴史の古い街の1つ。現在、市民の半数以上を黒人・ヒスパニック・アジア系の有色人種が占める。》

 ボストン市庁舎 Boston City Hall

《現在の市庁舎は、カルマン・マキンネル&ノウルズ設計により1968年竣工。当時のモダニズムの代表的建築物として知られる。》

能もなき渋柿どもや門の内

 先日、道端の街路樹に柿の木があった。柿の色が青空に映えている。葉は落ち、実は枝に鈴なりであった。近くに寄り、下から見上げる。一番の低い位置にある実は手が届かない高さにあった。

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 「能もなき渋柿どもや門の内」

 夏目漱石の俳句で、明治31年(1898年)の句である。

 坪内稔典編『漱石俳句集』の解説に、

 《明治二十八年五月二十八日、漱石は神戸の病院に入院していた子規にあてて、「小子近頃俳門に入らんと存候」と書き送った。松山の中学校教員であった漱石は、「俗流に打混じアッケラ閑として消光」しているが、「僻地師友な」く、「結婚、放蕩、読書」のどれかを選ばないことには、この田舎では辛棒できないと言う。「俳門に入らん」というのも、田舎暮らしの気晴らしをしようということだったにちがいない。そして、いくらかは病気になった俳句好きの友人への挨拶の気持ちもあっただろう。(後略)》

 

 

ボルヘスの『記憶の図書館』

 「ちくま」12月号で、国書刊行会の新刊広告を見た。

 ボルヘス対話集成『記憶の図書館』である。垂野創一郎訳。

 《ポー、カフカ幻想文学推理小説、日本、仏教、映画ーー20世紀文学を代表する巨匠が縦横自在に語った深遠で博大な118の対話。》

 J・L・ボルヘス、O・フェラーリ著『記憶の図書館』

記憶の図書館|国書刊行会 (kokusho.co.jp)

 

 

今年の3冊から

 読売新聞の読書面に、「2021年の3冊」が掲載されていた。栩木伸明氏が、黒川創著『旅する少年』(春陽堂書店)を挙げていた。

 編集グループSUREの『海老坂武のかんたんフランス料理』で、海老坂武さんと黒川創さんの対話が興味深かった。『旅する少年』に注目する。

 中島隆博氏が、森まゆみ著『路上のポルトレ』(羽鳥書店)を挙げていた。

森まゆみ『路上のポルトレ── 憶いだす人びと』 | 羽鳥書店 (hatorishoten.co.jp)

 

 

 

 

「言葉の人生」

 年末になると一年を振り返って新聞の書評欄に今年の本から「この3冊」といったアンケート特集がある。

 18日の毎日新聞の「この3冊」を手に取ってみた。中島京子氏・選に橋本治著『人工島戦記』という本があって値段をみて驚いた。

 堀江敏幸氏・選の「この3冊」で注目したのが次の2冊だった。

 松浦寿輝著『わたしが行ったさびしい町』

 片岡義男著『言葉の人生』

 『言葉の人生』は、「サンデー毎日」連載に書下ろしを加えた全88篇を所収という。

 《言葉と作家の知的で愉快な関係を思う存分に味わえる、9年ぶりの語学エッセイ。》

片岡義男の本 | 左右社 (sayusha.com)

 

 

 

言葉の人生