2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

山田稔の「ある眼鏡の話」

歩道沿いの草地にクローバーの白い花が咲いている。シダレザクラが点々と植えられている通りだ。そうした樹木のまわりに草むらが拡がっている。何気なく草むらを眺めると、目の周りが黒く口のあたりが白い猫が、わたしの方を見つめているのだった。じーと、…

奥野良之助の『さかな陸に上る』

ハスと睡蓮の生えている公園の池へ寄り道する。ハスは枯れたままで、折れ曲がった茎や葉が水面に浮いていた。まだ、冬枯れのままだ。水面に目を見張っていると、なにやら動くものがいる。メダカだ。睡蓮の葉と葉の間の水の中を機敏に泳いでいた。水面にキラ…

枇杷の実

枇杷(びわ)の実がまだ小さいけれど、もう育っている。寒を過ぎた頃に散歩の途中に見かけた枇杷の木だ。寒い時期だったけれど枇杷の花が咲いていて、良い香りが漂って来たものだ。甘い香りだった。垣根からはみ出すように伸びている枇杷の枝に近寄って見た…

辻原登の『花はさくら木』

回り道をしている時に、キリシマツツジの密集して咲いている植え込みに出くわした。鮮やかな紅色である。植え込みは十メートルほど連続して花が展開されている。花が枝と葉を覆い隠している。見事だなぁ。『蕪村句集』に、 つゝじ野やあらぬ所に麦畠(むぎば…

嵐山光三郎の『悪党芭蕉』

街路樹に高さが四メートルほどのトウグミの木があり、花が満開であった。白い色で垂れ下がって咲いている。この木の近くにクワの大木もあり、穂状の花が見られた。雄株の木のようだ。 書店で「新刊ニュース」2006年5月号をもらう。「著者との60分」で…

ラジオ深夜便で宮迫千鶴を聞く

四月二十日は二十四節気のひとつ穀雨である。昨夜からの風雨が、朝になるとすっかり止んで晴れた。少し寒くなる。夜半の強い風雨でかなり桜も散った。この桜は前々日のソメイヨシノ。通りの街路樹の桜は葉桜になりつつある。 花ちりて木の間(このま)の寺と…

若葉(本)とブラウジング

橋のたもとや川岸にヤナギが植えられている。通りの街路樹の中に根元の太い幹で、背丈の高いシダレヤナギの若葉が芽吹いている。細長い葉の形だ。『蕪村遺稿』に、 柳から日のくれかゝる野路(のみち)かな 花に啼(なく)声としもなき乙鳥(つばめ)哉 ツバ…

吉田健一訳の「内地の船旅」

川を渡っていると、最近見かけないカモの群れに代わって、アオサギを二羽ほど見かけた。ヒドリガモの群れは北へ旅立ったのかもしれない。立つ鳥跡を濁さずかな。 先日、カヌーを漕いでいる人たちを見かけた。 通りがかりに古書店がある。開店して数年でまだ…

多田道太郎の「漬物とチーズ」

通りの街路樹にクマノミズキの若葉が見られる。かなり大きな樹木で初夏には花が咲く。この木の近くには、桑の木も植えられている。クマノミズキは『大辞泉』を引用すると、 ミズキ科の落葉高木。葉は対生し、卵状長楕円形で裏側は白色を帯びる。六、七月ごろ…

日米交換船のこと

街路樹の桜の中に、八重桜が咲いていた。花の色はソメイヨシノの白色ではなく淡紅色である。『蕪村句集』に、 まだきとも散リしとも見ゆれ山桜 花に暮(くれ)て我家(わがいへ)遠き野道かな たまっていた新聞の切り抜きを読む。四月六日の朝日の文化欄で、…

街の考現学と河原淳

通りの街路樹のソメイヨシノが散り始めている。花嵐の名残りの花が、目に鮮やかだ。桜の木の周りには、花びらが散って敷き詰めたようになっていた。桜並木の中に、椿の木があって、ちょうど花盛りだった。見事だなぁ。先日の花嵐の風で、落下したらしい椿も…

山下裕二の解説

桜の花が盛りのころに吹く風、それも嵐のような強い風。それを花嵐という。昨日の花吹雪に巻き込まれたのとは、打って変わって、穏やかな天気になった。 山吹の花がポツポツと咲き始めている。『蕪村句集』に、 山吹や井手(ゐで)を流るゝ鉋屑(かんなくず…

小林秀雄の講演テープ

昨日から降り続いていた雨が、正午前には小降りになり一時止んだ。その後、降ったり止んだりを繰り返して夕方には雨も止んでいた。その後も風は強く吹いた。南よりの風で気温は高めであった。 街路樹のソメイヨシノのそばを通り過ぎる時に、桜吹雪に巻き込ま…

レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密

大陸からの黄砂で遠くの景色が霞んでいる。例年、この頃になると黄砂に覆われる。ちょうど桜の満開の時期と重なるかのようだ。春霞かな。 歩道のそばにヨモギが生えている。若葉が目に鮮やかだ。 NHK教育テレビの「新日曜美術館」は「レオナルド・ダ・ヴィン…

ラビリンスとしての古本屋

五日は二十四節気のひとつ清明(せいめい)だった。春分から地球が太陽の周りを十五度ほど回ったことになる。清明とは、『大辞泉』によると、 二十四節気の一。四月五日ごろ。このころ、天地がすがすがしく明るい空気に満ちるという。 午後五時ごろの青空に…

さくら狩美人の腹や減却す

街路樹のソメイヨシノは今が見ごろかな。あちこちの公園でも桜人*1が増えている。その桜人を詠んだ蕪村の句に、 さくら狩(がり)美人の腹や減却(げんきゃく)す*2 花の幕兼好を覗く女あり*3 一句目は、ことわざでいうと、「花より団子」? なんだか、おか…

春雨や蛙の腹はまだぬれず

午前は曇っていたが、午後から雨になる。しとしとと静かに降る雨である。春雨じゃ濡れて行こう。『蕪村遺稿』に、 春雨や蛙(かわづ)の腹はまだぬれず 春雨や珠数(じゅず)落したるにはたず(づ)み*1 春雨や鶴の七日をふりくらす*2 『芸術新潮』2006…

ゆき暮て雨もる宿やいとざくら

橋を渡っていると何やら食べ物を川へ放り投げている人たちがいた。歩道の欄干にもたれかかって、袋からポップコーンを撒いている。そばに寄ってみると、水面にヒドリガモの群れが泳いでいるのだった。公園で、鳩に食べ物を与えているかのような光景だった。…

久世光彦のスラップスティック・コメディ

正午前に雷雨になった。その後、しだいに天気が回復して青空になる。公園や通りに植えられた桜が咲き始めた。桜といえば、蕪村の『蕪村句集』に、 手まくらの夢はかざしの桜哉 みよし野ゝ(の)ちか道寒し山桜 旅人の鼻まだ寒し初ざくら ねぶたさの春は御室…

建築家・前川國男

きのう街路樹に赤い実のなっている木があった。幹にプレートの説明板がくくりつけてあり、小学生が書いたような文字で〈ナナメノキ〉と記されていた。斜め? 不思議な名前の木だな。木の高さは五メートルほどで、常緑樹である。 説明板には小さい文字で〈6…