2010-01-01から1年間の記事一覧

ジャン・ルノワール監督の『フレンチ・カンカン』

「フランス映画特集 黄金期の作品たち」からジャン・ルノワール監督の『フレンチ・カンカン』(1954年、フランス、105分、カラー)を観る。朝の部で中高年の観客が多い。 パンフレットに、 J・ルノワール監督によるオペレッタ。19世紀末、パリで上…

ジャン・ルノワール監督の『素晴らしき放浪者』

「フランス映画特集 黄金期の作品たち」が、10月8日から映像文化ライブラリーで始まった。 初日は、ジャン・ルノワール監督の『素晴らしき放浪者』(1932年、フランス、85分、白黒)である。原題:BOUDU SAUVE DES EAUX。夜の部で観客は20人余り…

ピンチョンの『ヴァインランド』

トマス・ピンチョンの『ヴァインランド』の解説を訳者の佐藤良明氏が書いている。 《毎年十月になると、世界のジャーナリストの間でノーベル賞候補の推測が飛び交うのだが、トマス・ピンチョンはかねてからそのリストの常連である。しばらく前からボブ・ディ…

「スズメバチの巣」を聴く

夜、NHKラジオの「ラジオ文芸館」で、アガサ・クリスティの短編「スズメバチの巣」を聴いた。アナウンサーの語りと音響効果で構成する聴く短編小説。中尾晃一郎アナウンサーが短編を朗読した。エルキュール・ポアロの声音(こわね)のゆっくりした語り口が印…

何蒔くと秋の畠を一人打つ

晴天で、爽やかな風が吹く。 子規の句に、 「鳶舞ふや本郷台の秋日和」 「何蒔くと秋の畠を一人打つ」 明治二十七年の句。 園芸店で野菜の苗を買う。わけぎ、パセリ、サニーレタス。水菜は店の人からおまけにもらう。 鉢植えの植物が置いてあり、彼岸花が目…

柿熟す愚庵に猿も弟子もなし

秋分の日から急に涼しくなった。暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったものだ。昨夜から今朝にかけてにわか雨があった。最高気温23℃、最低気温18℃。 収穫の秋である。イチジクの木に色付きはじめた実がなっていた。 子規の句に、イチジクではないが柿の句が…

『書斎の死体』を読む4

田村 ミセスにお会いしていると、まるでジェーン・マープルと対面しているような錯覚におちいるのですが、ミス・マープルのモデルは、ご自身なのですか? クリスティ じつは、わたしの祖母の感じに近いのです。ピンク色の肌の白髪の老婦人で、小さな村に引き…

『書斎の死体』を読む3

ロンドン近郊のセント・メアリ・ミードという小さな村を訪れた田村隆一のミス・マープルの家での架空対談の場面である。*1 田村 失礼ですが、アガサ・クリスティ先生でいらっしゃいますか。ぼく、日本からやってきたタムラと申します。職業は詩人ということ…

『書斎の死体』を読む2

正午ごろから雨が降り始める。夕方、やや雨が強まる。 田村隆一の『書斎の死体』に所収の「セント・メアリ・ミード――アガサ・クリスティとの架空対談」は、一九三〇年代のロンドン近郊、セント・メアリ・ミードという小さな村へ、田村隆一がアガサ・クリステ…

『書斎の死体』を読む

晴れて北からの風が強い。昼は気温が上がり汗ばむが朝晩は肌寒い。 田村隆一の『書斎の死体』(河出書房新社)を読んでいる。 「セント・メアリー・ミード――アガサ・クリスティとの架空対談」や「甘美なる死」というエッセイでのアガサ・クリスティについて…

ナツメと十六夜の月

街路樹のナツメの実が赤く色付いている。完熟した実は赤黒くなり、樹木の周辺に散らばっていた。 クロウメモドキ科の落葉高木。葉は卵形で、三本の脈が目立ち互生する。夏、黄緑色の小花をつけ、楕円形の実を結び、暗赤褐色に熟す。実は食用に、また漢方で乾…

月と睡蓮

二十四節気のひとつ秋分の日である。昨夜から雨模様で、早朝も一時強雨あり。後に曇り晴れる。雲の形が夏の雲から秋めいてきた。気温も最低気温が20℃で肌寒い。最高気温は27℃まで上がる。北風が強く吹く。 夕方、東の空に満月が昇って、19時半ごろ、月…

雨宿りと俳優

昨日の夕方、にわか雨があり久しぶりに雨宿りをした。お店の軒先に雨が止むのを待つ人がぼーっと空を見上げている光景。こういう光景はなぜか懐かしさを覚える。20分ほどで雨あがる。 もう秋分だというのに暑く、この日の気温は30℃を超えた。 先日、俳優…

暁や厨子を飛び出るきりぎりす

早朝、ポリバケツの水に、浮いているバッタを見つけた。 はてな、どこからやって来たのだろう。 指先でつまんで、ピーマンの葉の上に移動させた。 バッタはおとなしく葉っぱの上にじっとしている。色は緑色ではなく土色をしている。まるで地面の色に似て、保…

映画『UFO少年アブドラジャン』

「アジア映画特集 日本から遠いアジアの国々」から、ズリフィカール・ムサコフ監督の映画『UFO少年アブドラジャン』(1992年、ウズベキスタン、88分、カラー)を観た。午前の部で観客は多い。 パンフレットに、 ウズベキスタンのとある村で集会が開か…

映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』

「アジア映画特集 日本から遠いアジアの国々」の初日、ゲオルギー・ダネリア監督の「不思議惑星キン・ザ・ザ」(1986年、旧ソ連・グルジア、135分、カラー)を映像文化ライブラリーに観に寄る。 パンフレットに、 旧ソ連・グルジア共和国出身の監督が…

もう一人のつりたくにこのこと

午後7時半過ぎに東の空に木星が昇っていた。地球から見て、巨大な惑星だということが肉眼で実感できる星である。観望するにはいい時期である。木星といえば、ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』と『ガニメデの優しい巨人』を思い出す。 朝晩が急に…

北國の庇は長し天の川

昨日、午後8時ごろ晴れた南西の空に三日月が眺められた。 今朝、5時に外へ出てみると東の空にオリオン座、天頂には天の川が広がっていた。月は見えない。 まだ静かな夜明け前、虫の音がにぎやかに聞こえる。 子規の句に、「北國の庇(ひさし)は長し天の川…

「落語の中の食文化」3

「貧乏花見」をCD「上方落語特選 笑福亭仁鶴 第一集」で聴く。 貧乏長屋とは、裏長屋のことで、この噺では、その裏長屋の連中が、蒲鉾(釜底の飯のこげ)、おから(きらず)、玉子の巻焼き、蛸の足、煮豆、とりがいの酢の物を持って花見に行く。 酒はお茶で…

「落語の中の食文化」2

先週、ラジオ深夜便で「落語の中の食文化」と題する石毛直道氏の談話が放送された。 第2回の今夜は、「長屋の花見」に出て来るご馳走の話であった。 上方の落語「貧乏花見」が先にあって、大正時代に東京へ伝えられて「長屋の花見」になった。 「貧乏長屋の…

秋立てば淋し立たねばあつくるし

6日の夜から曇り、7日は小雨がぱらついた。台風が九州北部接近中。この日午後3時ごろより夕方まで小雨。のちに雨あがる。 地面に水たまりが残っていた。うれしい干天の慈雨! 草や木がよろこんでいる。 日中の暑さはあいかわらずだが、夜になると虫が鳴く…

桂文我「はつてんじん」

子供の出て来る落語に「初天神」があるが、子供というのは面白い。 桂文我のCD「おやこ寄席ライブ」で、「つる」「はつてんじん」「えんようはく」を聴いた。 その中で、「はつてんじん」はあるお父ちゃんが天神さんへしぶしぶ子供を連れてお参りに行く。「…

桂文我「おやこ酒」

一昨日のラジオ深夜便で、「落語の中の食文化」という石毛直道氏の談話を放送していた。 桂文我のCD「おやこ寄席ライブ」で、「サギとり」、「おやこ酒」、「どうぎり」を聴いた。 おとなの好きな飲み物にお酒というものがあるが、落語「おやこ酒」はお酒に…

「落語の中の食文化」

9月になっても雨もなく連日の猛暑である。最高気温36℃。 昨夜の関西発ラジオ深夜便は、西橋正泰さんの担当日で、ないとエッセーは、「落語の中の食文化〜落語の食べ物トップテン」と題した石毛直道氏の談話を聴いた。 古典落語の上方噺(ばなし)に出てく…

『洛中通信』を読む

1日、午前6時過ぎの南の青い空に月が高く昇っているのが見られた。連日の熱帯夜。早朝、ニガウリを収穫する。29センチ。 夕方公園の池に寄る。観察しているハスは、花弁(はなびら)が水面に落ちて、如雨露(じょうろ)のような花托(かたく)がすーっと…

『第四人称』

この夏に読んだ一冊で、外山滋比古(とやましげひこ)著『第四人称』(みすず書房)が面白かった。 この本の裏表紙に、この本がどういったエッセイかを簡潔に述べているので引用する。 「アウトサイダーはインサイダーよりも早く客観的評価を下すことができ…

行水をすてる小池や蓮の花

昨日の夕方、先日はつぼみだったハスの花だが、いつの間にか花弁(はなびら)が散っていた。 一片、一片の花弁は大きい。手のひらほどのサイズ。 花弁や雄蕊(おしべ)、そしてまだ小さな花托(かたく)が、ゆらゆらと池を吹き抜ける風に気持ちよさそうにゆ…

ハスと『随想』

公園の池にハスの大きなつぼみが風にゆれていた。花が散った後のハスの花托(かたく)が如雨露(じょうろ)のような形で池に立っているのも見られる。今日も最高気温は35度。強い陽射しの猛暑。 雑誌『新潮』に連載していた蓮實重彦の「随想」が単行本で今…

ネクタイをしない哲学者を読む

午前4時、東の空にオリオン座が昇って来ている。オリオン座のリゲル、おうし座のアルデバランが星空に輝いている。南西の空に木星が、木星の右手下に丸く月が西に傾きかけていた。 頭を天頂に向けると、天の川が広がる。地上では虫の鳴き声が聞こえて来る。…