2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「転々私小説論」を読む4

多田道太郎の「転々私小説論」(三)「飄逸の井伏鱒二」で、安岡章太郎著『わたしの20世紀』の「おおらかな貧しさ」の章に、小津安二郎の映画『東京の合唱』と井伏鱒二の「先生の広告隊」との類似にびっくりした経緯が述べられている。 それで、『わたしの…

「転々私小説論」を読む3

多田道太郎の「転々私小説論」(三)「飄逸の井伏鱒二」で、山中貞雄の映画についてふれています。 昭和五年前後の大不況の時代は、流行の風俗として見れば、どのようなものだったのか。 多田さんの話はつづきます。 当時、昭和一けた台のはやりの風俗として…

「転々私小説論」を読む2

多田道太郎の「転々私小説論」(三)「飄逸の井伏鱒二」で、小津安二郎の映画『東京の合唱(コーラス)』(1931年)と井伏鱒二の小説「先生の広告隊」について、《同時代に起こっている現代風俗として映画と小説で描いたわけです。これは現代の奇跡だと…

「転々私小説論」

多田道太郎の「転々私小説論」を読む。 『群像』2001年4月号である。 無声映画で小津安二郎の映画に『東京の合唱(コーラス)』(1931年、松竹キネマ、90分、白黒、無声)という映画がある。 昨年、活動弁士・佐々木亜希子さんの活弁でこの映画を…

映画『ラヴィ・ド・ボエーム』

21日、今月(9月)のアキ・カウリスマキ監督特集で上映の5本のうち『ラヴィ・ド・ボエーム』(1992年、フィンランド、103分、白黒)を観に寄った。観客が50人ほど。 公開時に観ているのだが、パリを舞台にした芸術家のボヘミアン生活を撮った作…

松風や紅提灯も秋隣

22日は、二十四節気のひとつ秋分である。 朝晩が涼しくなり、百日紅(サルスベリ)の花が咲きはじめた。紅色である。 ミソハギ科の落葉高木。高さ三〜七メートル。幹は薄い紅紫色で皮ははげやすく、跡が白くなり、滑らか。葉は楕円形。夏から秋にかけて、…

小林信彦著『四重奏カルテット』から

小林信彦著『四重奏カルテット』が幻戯書房から刊行された。 四篇のうち、「夙川(しゅくがわ)事件ー谷崎潤一郎余聞」が読ませる。 渡辺温が岡本の谷崎潤一郎宅へ東京から出張で訪れ原稿依頼で帰った後、夙川の踏切事故で事故死する。その事故死に関わった…

アキ・カウリスマキ監督の『カラマリ・ユニオン』

今月(9月)は、アキ・カウリスマキ監督特集。5作品が映像文化ライブラリーで上映される。 アキ・カウリスマキ監督の映画『カラマリ・ユニオン』(1985年、フィンランド、80分、白黒)を鑑賞。原題はCalamari Union。 出演はマッティ・ペロンパー、…

小野耕世『世界のアニメーション作家たち』を読む2

台風の影響で低い雲が南から北へ向かってゆっくり移動してゆく。 曇り空で南風は湿気を含んで蒸し暑い。街路樹に団栗(どんぐり)の実がなっていた。 シラカシ(白樫)の実で、下部を殻斗(かくと)が包んでいる。 小野耕世著『世界のアニメーション作家たち…

小野耕世『世界のアニメーション作家たち』を読む

ヤン・シュヴァンクマイエル、ルネ・ラルー、カレル・ゼマンなど15人の世界のアニメーション作家へのインタビューが収められている本に、小野耕世さんの『世界のアニメーション作家たち』(人文書院)があります。 ルネ・ラルーの『ファンタスティック・プ…

秋風や夢の如くに棗(ナツメ)の実

街路樹の棗(ナツメ)が実を付けていた。 暗赤褐色に色付いているのだった。 「秋風や夢の如くに棗(ナツメ)の実」 石田波郷の句である。 「北支徳県にて」という前書きがある。 昭和十八年九月召集、佐倉連隊に入隊。 昭和二十年内地に帰還。

イチモンジセセリと「EYEMASK」44号

8月の下旬にイチモンジセセリがツツジの葉にとまっていた。 セセリチョウ科のチョウ。翅(はね)は開帳三・五センチくらい、黒褐色で白点列がある。幼虫は稲の害虫で、葉を巻いて苞(つと)状の巣をつくるため、葉捲虫(はまくりむし)・稲苞虫(いねつとむ…

『ボクのつぶやき自伝』を聞く

8月の第14回広島国際アニメーションフェスティバル会場で久里洋二さんに出会ったので、久里洋二さんの新刊『ボクのつぶやき自伝―@yojikuri』の内容についてご本人に確認したのだった。 本に書いたとおりだというご返事だった。 隅田川での船で深沢七郎に…

松風をうつつに聞くよ夏帽子

7日は二十四節気のひとつ白露である。まだ最高気温が30度を超える日がつづいている。 しかし、もうイチジクが色付いて食べごろになった。 今年は猛暑日が多く、それゆえかイチジクが甘い。 芥川龍之介の句に、「震災の後増上寺のほとりを過ぐ」という前書…

『転々私小説論』のこと

来月(10月)の新刊で、ポール・セルー著・阿川弘之訳『鉄道大バザール 上』と多田道太郎著『転々私小説論』の二冊が出るようです。どちらも講談社文芸文庫からですね。 最近はポール・セルーをポール・セローと呼ぶようですが、阿川さんの訳されたセルー…

初秋の蝗(いなご)つかめば柔らかき

二十四節気の処暑を過ぎても熱帯夜がつづいていたが、九月に入って朝晩に吹く風が涼しく心地よい。 セミの鳴き声が少なくなった。 先日、公園の池にショウジョウトンボを見つけた。 トンボ科の昆虫。雄は全体に鮮やかな赤色。雌は橙(だいだい)色。夏、池沼…