2014-01-01から1年間の記事一覧

追悼・赤瀬川原平さん

山茶花(サザンカ)の花が咲き始めていた。 花の形と紅色が見事だ。青空に紅色が映(は)える。 先日、赤瀬川原平氏の訃報を新聞で知る。 思い出しながら、氏について書いてみよう。 最初は、雑誌「美術手帖」で千円札をモチーフにした作品の裁判の記事で、…

天あをく枯無花果に雪こぼす

イチジクが熟して暗紫色になっていた。まだ食べごろである。 「無花果にゐて蛇の舌みえがたし」 昭和十三年(1938年)の句で、飯田蛇笏の「山響集」にある。 「無花果の門の格子や水を打つ」 「山廬集」にある明治四十年の句である。 「天あをく枯無花果…

臀たれてむだ飯くらふ秋の猫

午前4時、オリオン座が南西に昇っていた。冬のダイヤモンドと呼ばれる六つの星が眺められる。 北東におおぐま座の北斗七星がひしゃくの形に並んでいた。 東の空に木星が高く昇って輝いている。 晴天がつづく。最高気温21℃、最低気温9℃。 イチョウの葉が…

奇妙な文学史的事実

23日は二十四節気のひとつ霜降であった。最高気温22℃、最低気温13℃。 晴天で気持ちよい風でおだやかだ。 25日、最高気温24℃。最低気温13℃。快晴で風がなく過ごしやすい。 阿川弘之著『七十の手習い』を読む。 随筆集で、『菊池寛全集』第二巻 1…

星座の王者

最低気温11℃で、最高気温が23℃。 夜明け前、午前五時ごろ南西にオリオン座が眺められた。 北東に、おおぐま座が見られる。晴れた空に、冬の星座が華やいでいる。 木星も東に高く昇っている。オリオン座のリゲル、おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカ…

梅棹忠夫著『日本探検』のこと

講談社の雑誌「本」10月号の連載で原武史の「鉄道ひとつばなし」が、1960年12月に『中央公論』12月号に掲載された梅棹忠夫の「名神道路」というルポルタージュで、なぜ日本では道路網の整備が遅れたのかと提起した問題をめぐり論じていました。 そ…

「日本映画 隠れた名作」

中公選書の新刊に、川本三郎・筒井清忠著「日本映画 隠れた名作」が出ていた。 「昭和30年代前後」という副題があり、昭和30年代前後の作品と監督を語る対談本だ。 スクリーンで観たことのある監督の作品をどのようにお二人が感じたかという興味で読んだ…

田坂具隆監督の映画「乳母車」

「生誕100年 宇野重吉特集」からの一本。 田坂具隆(ともたか)監督の映画『乳母車』(1956年、日活、109分、白黒)を観る。観客に女性が多い。 出演は、芦川いづみ、石原裕次郎、新珠三千代、宇野重吉、山根寿子、中原早苗。 美術が木村威夫、音…

團栗の落ちずなりたる嵐かな

8日、二十四節気のひとつ寒露であった。午前一時半ごろ、月が高く西に眺められた。東の空にオリオン座が昇っていた。午後七時すぎから満月の夜の皆既月食を見物する。 9日から10日にかけては、十六夜の月が天高く眺められた。煌々と月がきれいだ。 13…

オタール・イオセリアーニ監督の映画「田園詩」

今月(10月)の「オタール・イオセリアーニ監督特集」からの一本。 オタール・イオセリアーニ監督の映画『田園詩』(1976年、旧ソ連・グルジア、98分、白黒)を観る。 出演は、ナナ・イオセリアーニ、レゾ・チャルハラシヴィリ、タマーラ・ガパラシ…

オタール・イオセリアーニ監督の映画「落葉」

《カンヌやベルリン、ヴェネチアなど海外の名だたる映画祭で数々の賞を受賞するなど世界各国で高い評価を受けるグルジア出身の名匠、オタール・イオセリアーニ。今回の特集では、ワイン工場で働く若者の日常を描いた「落葉」、思わぬ自由な時間を得て、人生…

「ホノルルまで」を読む3

阿川弘之の「ホノルルまで」を読む。「出発まで」「ホノルルまで」につづいて、「ハワイ素描」の中に、「ハワイの標準語」として半分冗談として、つぎのようなエピソードがある。 《税関の手続がすんで、船を下りた私が、最初に旅装を解いたのは、日本人町の…

「ホノルルまで」を読む2

街路樹からドングリが落ちて地面に転がっている。 ドングリはやや細くて長い感じのする形だ。コナラのようだ。 ブナ科の落葉高木。山野に自生する。葉は倒卵形で先がとがり、縁にぎざぎざがある。五月ごろ、新しい枝の下部に尾状の雄花、上部に雌花がつく。…

「ホノルルまで」を読む

4日、夕方の月が雲間の青空に白く明るかった。東から西へ雲がゆっくりゆっくり移動してゆく。 台風が近づいている。虫の鳴き声が途切れることなく道端の草むらから聞えて来た。 日記や紀行文を読むことが多い。夏の某日のことだが、老舗古書店の埃っぽい店…

ながき夜の枕かかえて俳諧師

晴れる。最高気温29℃。最低気温22℃。夕方、青空の南東に月が眺められた。半月である。 街路樹のノグルミの実が落ちて、幹の周辺に散ばっていた。 拾って触ると、堅くてとげとげしい。松ぼっくりのような形だが、ハリネズミのような感じがする実だ。 クル…

無花果にゐて蛇の舌みえがたし

曇り、最高気温27℃、最低気温20℃。 無花果(いちじく)が色づいている。園芸店で無花果の苗を見かけた。挿し木でふやすという。 天高く馬肥ゆる秋である。 クワ科の落葉高木。高さ約四メートル。葉は手のひら状に裂けていて互生する。初夏、卵大の花嚢(…

団栗の寝ん寝んころりころり哉

街路樹の周囲にドングリが散らばっていた。手にとって見る。シラカシの実ではないだろうか。 ブナ科の常緑高木。山地に自生。葉はやや細長く、裏面は灰白色。四月ごろ、尾状の雄花と苞(ほう)に覆われた雌花とがつき、秋にどんぐりがなる。材を器具に用いる…

久松静児監督の映画「おふくろ」

「生誕100年 宇野重吉特集」からの一本、久松静児監督の映画『おふくろ』(1955年、日活、97分、白黒)を観る。 出演は、望月優子、木村功、左幸子、宇野重吉、二木てるみ、宍戸錠、沢村貞子、桂典子、千石規子、藤代鮎子。 田中千禾夫の戯曲の映画…

蛭川伊勢夫監督の映画「東京の空の下には」

右上写真の左が宇野重吉の透馬、右が山田五十鈴の徳子。 9月、10月は「生誕100年 宇野重吉特集」が開催されている。 蛭川伊勢夫監督の映画『東京の空の下には』(1955年、劇団民芸、日米映画、92分、白黒)を観る。 制作が劇団民芸と日米映画の…

「天野祐吉対話集」

20日、彼岸だった。道端に彼岸花が咲いていた。 ヒガンバナ科の多年草。土手や田の畦に生える。秋の彼岸のころ、高さ約三〇センチの花茎を伸ばし、長い雄しべ・雌しべをもつ赤い六部弁花を数個輪状につける。花の後、線形の葉が出て越冬する。有毒植物であ…

溝口健二監督の映画「西鶴一代女」

「生誕100年 宇野重吉特集」からの一本で、吉村公三郎監督の映画『西陣の姉妹』(1952年、大映京都、110分、白黒)の次に、溝口健二監督の映画『西鶴一代女』(1952年、新東宝、児井プロダクション、136分、白黒)が上映される。 どちらも…

吉村公三郎監督の映画「西陣の姉妹」

今月(9月)の「生誕100年 宇野重吉特集」で、35ミリフィルムに残された宇野重吉さんの出演作を上映している。 12日に豊田四郎監督の映画『雁』(1953年、大映東京、104分、白黒)の後、翌日13日に上映された吉村公三郎監督の映画『西陣の…

映画「雁」

「生誕100年 宇野重吉特集」が上映されている。その中の一本、 豊田四郎監督の映画『雁』(1953年、大映東京、104分、白黒)を鑑賞した。 出演は、高峰秀子、芥川比呂志、宇野重吉、東野英治郎、三宅邦子。 美術を木村威夫が担当している。音楽が…

けふという今日名月の御側(おそば)かな

先日、街路樹のザクロの実がつやつやと色づいていた。まだ食べ頃ではなさそうだ。 朝晩の風が肌寒くなった。 8日、二十四節気のひとつ白露で、夜半の月が晴れた空に白く明るく輝いていた。 澄み切った夜空に中秋の名月をじっくり眺める。月の明かりが地面に…

Whole Earth Catalogのこと

雑誌「スペクテイター」の30号が「 ホール・アース・カタログ〈後篇〉」で、スチュアート・ブランドへの赤田祐一さんのインタビューがあった。 それによると、スチュアート・ブランドが歓原発論者になっているという。 確かめるために、スチュアート・ブラ…

日本映画俳優全史から

猪俣勝人・田山力哉著『日本映画俳優全史―女優編―』を読む。 吉村公三郎監督の映画『わが生涯のかゞやける日』(1948年、松竹大船、101分、白黒)に出演の山口淑子について、 《またの名を李香蘭、というよりは、その名前による異邦人の女優として売…

映画「わが生涯のかゞやける日」

9月、10月は、生誕100年にちなんで宇野重吉さん(1914―1988)の特集を開催します。宇野さんは、劇団民芸を率いて日本の新劇界を代表する役者として活躍する一方、その確かな演技力で映画にも大きな足跡を残しました。そうした宇野重吉さんの出…

蟲ひとつ鳴きおとろふるこゑちぎれ

2日、晴れる。最高気温30℃、最低気温23℃。夕方に上弦の月が眺められた。 先日、公園の池にシオカラトンボを見つけた。人が近寄っても逃げる気配がない。 蝉時雨(せみしぐれ)のなかで、ツクツクボーシという蝉の声が聞えて来た。 ツクツクボウシのよう…

映画「少年と自転車」

「ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督特集」の最後の一本、『少年と自転車』(2011年、ベルギー、フランス、イタリア、87分、カラー)を観た。 出演は、セシル・ドゥ・フランス、トマ・ドレ、ジェレミー・レニエ。 12歳のシリルは自分を養…

映画「ある子供」

「ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督特集」からの一本、映画『ある子供』(2005年、ベルギー、フランス、95分、カラー)を鑑賞する。 出演は、ジェレミー・レニエ、デボラ・フランソワ、ジェレミー・スガール。 20歳のブリュノと18歳の…