2015-01-01から1年間の記事一覧

天の星、海の星

17日、快晴の日の出前に東の空を眺めると明るい星が三つ並んでいた。 我らの太陽系の惑星が接近しているのである。 一番に目立って明るく大きいのが金星であった。 金星の左下の方に、やや小さく見えるのが木星で、その左にちょっと下がった位置に火星も見…

映画「それでもボクはやってない」

9月から10月にかけて開催されている「特集・映画美術監督 部谷京子」からの一本。 周防正行監督の映画『それでもボクはやってない』(2007年、フジテレビジョン、アルタミラピクチャーズ、東宝、143分、カラー)を鑑賞する。 出演は、加瀬亮、瀬戸…

秋の山静かに雲の通りけり

秋晴れの日がつづく。最高気温23℃、最低気温11℃。 朝晩は冷え込むが、昼は気温が上がり、空気が非常に乾燥している。風は穏やかだ。 柿の実は枝に鈴なりで、色付いている。見た目では渋柿か甘柿かは分からない。 「渋柿の下に稲こく夫婦かな」 「秋風や…

「紀伊國屋書店出版部 history 1955―2015」の年譜から

紀伊國屋書店のPR誌「scripta」37号を頂く。 出版部60周年記念特集号であった。 冊子の真ん中に別刷りの用紙に「紀伊國屋書店出版部 history 1955―2015」と「book review 新刊書評より」とエッセイ三篇(上野千鶴子、池内了、岡崎武志)が収録さ…

秋の船本土離るる煤(すす)降らす

街路樹のツバキが実を付けていた。直径五センチほどもあり 艶々としている。 「夜寒来て関門の朝あたたかく」 「秋の船本土離るる煤(すす)降らす」 「海峡を流るるものや手袋も」 前書は、「健史を伴ひて帰郷す 十八句」とある。 引用句は、冒頭の三句であ…

雑誌『ちゃぶ台』のこと

書店でちょっと変わった装丁の雑誌を見つけた。人文科学書の新刊コーナーの平台に積まれていた。 『ちゃぶ台』というタイトルの雑誌で、「移住×仕事」号だった。 『ちゃぶ台』に、内澤旬子「移住してわかったこと」という文が掲載されている! この『ちゃぶ…

行秋(ゆくあき)を踏張てゐる仁王哉

8日は、二十四節気のひとつ寒露で、晴れる。最高気温25℃、最低気温15℃。 空気は非常に乾燥している。この時期は柿や無花果が出回っている。 「祭文(さいもん)や小春治兵衛(こはるじへえ)に暮るる秋」 「行秋(ゆくあき)を踏張てゐる仁王(におう)…

荒川洋治著『文学の空気のあるところ』

荒川洋治著『文学の空気のあるところ』で高見順への筆者の話が興味深かった。 高見順についての文学講演を活字にしているので、筆者の肉声が聞こえて来る。 高見順の日記は、読むといろいろ発見がある。「敗戦日記」や「終戦日記」として文庫にもなっていて…

「曰くありげ」と落語「百川」

ザクロの果実が鮮やかな色をしている。 ザクロ科の落葉高木。葉は長楕円形。六月ごろ、筒形で多肉質の萼(がく)をもつ橙赤色の花をつける。果実は球形で、紫紅色に熟すと裂けて種子が現れる。果実の外種皮を食用に、また樹皮を駆虫薬に用いる。ペルシア地方…

木の実落つきびしき音にむちうたる

街路樹のコナラの実が散っていた。 「昼餉(ひるげ)置く落葉は広くみな清し」 「木の実落つきびしき音にむちうたる」 中村汀女の俳句で、昭和十五年の句です。 新刊の中野翠著『いちまき ある家老の娘の物語』の書評、「波」10月号所収。 二十年かけて完…

山口昌男著『回想の人類学』のこと

「一冊の本」10月号に、新刊で山口昌男著『回想の人類学』の広告があった。 参照:『回想の人類学』http://www.shobunsha.co.jp/?p=3683 《本書は、個人雑誌『山口昌男山脈』に連載した前半(第5章まで)に、雑誌休刊後も続けられたインタヴュー(未発表)…

「鉄道ひとつばなし」学風の違い

講談社の雑誌「本」10月号の連載「鉄道ひとつばなし」(原武史)を読んだ。 「小熊英二と原武史」というタイトルで、二人が近現代史を主な研究対象としているのに二人の学風がまったく異なるのはなぜかを考えている。 小熊さんの近著『生きて帰ってきた男…

柿の木であいと答へる小僧哉

街路樹のナツメが色づいている。赤黒くなっている実も見られる。 鳥がつついているのか、木の周辺にナツメの実が落ちて散らばっていた。 「渋柿と鳥も知て通りけり」 「柿の木であいと答へる小僧哉」 小林一茶の俳句で文政三年(1820年)の句です。

連載「子規の音」、書簡より

27日、NHKラジオの文化講演会で「1960年代の司馬遼太郎」と題する関川夏央の講演を聴く。 その語り口と司馬遼太郎の作品を見る目の確かさが印象深かった。 新潮社の「波」10月号の連載「子規の音」(森まゆみ)第二十一回を読む。 京都に来た。北白…

映画『シコふんじゃった。』とジャン・コクトー

9月から10月にかけて、広島市出身の映画美術監督・部谷京子さんの特集を開催します。部谷さんは「シコふんじゃった。」で美術監督としてデビューし、周防正行をはじめ、滝田洋二郎、根岸吉太郎、廣木隆一、河瀬直美、原田真人、吉田喜重など、名だたる監…

名月や十三円の家に住む

街路樹のノグルミ(野胡桃)が果実を付けている。枝に手が届くので触ってみた。 花穂は棘(とげ)の形をしていた。まるでハリネズミのようだ。触ると棘が非常に堅い。樹高は高くて十五メートルくらいありそうだ。 クルミ科の落葉高木。日当たりのよい山地に…

『北米体験再考』が復刊

来月(10月)の新刊に鶴見俊輔著『北米体験再考』が復刊するようだ。岩波新書である。 目次 序章 ケンブリッジ 第一章 マシースン 第二章 スナイダー 第三章 フェザーストーンとクリーヴァー 終章 岩国 あとがき 人名索引・地名索引 「終章 岩国」から一部…

「戦後70年特別対談」から2

「群像」9月号の瀬戸内寂聴×高橋源一郎の「戦後70年特別対談」で、高橋源一郎さんがフィリピンへ戦後七十年目に行った理由を語っていた。 高橋 実は先月末に、フィリピンへ行ってきたんです。僕のおじたちの慰霊のために。さっき甘粕さんの話をしましたが…

「戦後70年特別対談」から

「群像」9月号を手にとってみた。 「言葉の危機に抗って」という「戦後70年特別対談」で、瀬戸内寂聴×高橋源一郎の二人が語り合っている。 瀬戸内さんの『美は乱調にあり』をめぐって、 高橋 (前略)また縁の話をすると、伊藤野枝と大杉栄を殺したといわ…

無花果を檣燈(しょうとう)顫(ふる)へ進みゐし

「無花果を檣燈(しょうとう)顫(ふる)へ進みゐし」 「曾(かつ)て大阪安治川河口、税関官舎に住みき」の前書きがある。 檣燈(しょうとう)とは、夜間の航行でマストの前方につけている白色光の灯火。 「無花果を檣燈(しょうとう)顫(ふる)へ進みゐし…

秋風や留守の用意と旅支度

彼岸花が満開である。 ヒガンバナ科の多年草。土手や田の畦に生える。秋の彼岸のころ、高さ約三〇センチの花茎を伸ばし、長い雄しべ・雌しべをもつ赤い六弁花を数個輪状につける。花の後、線形の葉が出て越冬する。有毒植物であるが、鱗茎(りんけい)を外用…

鳰(にお)の子のおくるるに親泳ぎ寄り

鴨(かも)が川を泳いでいた。渡り鳥のヒドリガモのようにも見えた。 もう渡り鳥の飛来か? しかし、くちばしの先が黄色く見えるので、調べると、渡り鳥ではなく季節による移動をしない一年中、同じところに棲(す)みついている鳥のカルガモだった。漢字は…

凧あげと漫画の印税

鶴見俊輔特集が『現代思想』10月臨時増刊号で出ていた。 参照:http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791713066 7月24日の朝に、ニュースで鶴見俊輔氏が亡くなられたと知る。 鶴見俊輔氏の本で、初めて買った本はなんだったろうか。 平凡社の「現代…

渋柿やあかの他人であるからは

8日は二十四節気のひとつ白露で、秋分の十五日前である。曇る。最高気温28℃、最低気温22℃。 11日、晴れる。空気が乾いている。気持ちのよい天気である。最高気温29℃、最低気温17℃。 街路樹のナツメの実が赤く熟してきた。 「南九州に入つて柿既に…

佐藤忠男著『映画で日本を考える』を読む3

佐藤忠男著『映画で日本を考える』からの覚え書き。 一九三一年の西倉喜代治監督の漫画映画「茶目子の一日」の感想がある。(忘れられた秀作「茶目子の一日」他、にて) 「蘇ったフィルムたち〜東京国立近代美術館フィルムセンター復元作品特集」で、昭和六…

佐藤忠男著『映画で日本を考える』を読む2

佐藤忠男著『映画で日本を考える』で、一九一〇年代のアメリカ映画が、日本映画と日本の大衆文化に与えた影響をめぐる考察をしている。 長谷川伸の「沓掛時次郎」、いわゆる股旅ものが昭和の初めにブームを起こしたが、物語のパターンとしてはウイリアム・S…

佐藤忠男著『映画で日本を考える』を読む

新刊で、佐藤忠男著『映画で日本を考える』を読む。 「一九一〇年代のアメリカ映画が日本文化に与えたもの」で述べられている一九一〇年代のアメリカ映画が、日本映画と日本の大衆文化に与えた影響をめぐる考察が興味深い。 7月にアルバート・パーカー監督…

「太陽」1971年5月号のこと

雑誌「太陽」1971年5月号を7月に、開催中の古本市で購入した。 春にも見かけたが、まだ売れ残っていたので。 「太陽」は「特集・世界の豪華船」で、執筆者は、金子光晴、小川国夫、阿川弘之、吉田健一、辻邦生、なだいなだ、丸谷才一、中井英夫、瀬戸…

りいと鳴く蟲のこもれる芒(すすき)かな

1日は二百十日で晴れた。最高気温26℃、最低気温22℃で南の風が吹く。 台風は日本海で熱帯性低気圧になった。蒸し暑い。 「とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな」 「りいと鳴く蟲のこもれる芒(すすき)かな」 「いつ来ても園丁の居り末枯るる」 前書きは、…

鉄道ふたつばなし

今月3日に亡くなられた阿川弘之さんの新刊書が出ている。 阿川弘之著『座談集 文士の好物』(新潮社) 阿川弘之著『食味風々録』(中公文庫) 講談社のPR誌「本」9月号の連載「鉄道ひとつばなし」(原武史)で「六月十三日午後の事」を読む。母の死の知ら…