2016-01-01から1年間の記事一覧

上汐のいよいよ早し雁渡る

川に渡り鳥がやって来ていた。ヒドリガモの群れです。 冬の到来を告げる季節になった。 「上汐のいよいよ早し雁渡る」 「雁渡る谷底かけて人の家」 「雁の声落ちしところに残されし」 中村汀女の俳句で、昭和二十六年(1951年)刊の句集「都鳥」に所収の…

「新刊展望」から

23日は、二十四節気のひとつ霜降であった。寒露と立冬の間。 寒露のころにマツタケが出始める。野菊咲く。 霜降のころ、セキレイが初めて現れる。と七十二候に出ている。 「新刊展望」11月号の今月の主な新刊に、加藤典洋の『言葉の降る日』、池内紀の『…

木犀の匂ふとまたも言はで居り

小雨が降ったり止んだりの天気で、最高気温17℃、最低気温16℃。 ザクロが雨に濡れて色付いていた。 雨に濡れた金木犀(キンモクセイ)は、香りが周辺に漂っている。近くに寄り、花を観察すると、強く甘い香りがする。 モクセイ科の常緑低木。よく分枝し、…

装幀を考える

紀伊國屋書店の「scripta」no.41と「大学出版」108号(2016年秋)を頂いた。 「大学出版」108号の特集は、「装幀を考える」。 装幀をめぐり四人が寄稿している。*1 その一人、「舟と装幀に関する覚書」(間村俊一)の文章が面白かった。 間村俊…

翻訳家10傑

「本の雑誌」10月号を読むと、「400号スペシャル なんでもベスト10!」という特集が目を引いた。 出版社10傑(坪内祐三)、翻訳家10傑(金子靖)という風に20人が寄稿している。 10月号で創刊から41年かかって400号を迎えたのだ。 「翻…

映画『猛進ロイド』

およそ100年前の映画館には楽士がいて、映画にあわせて伴奏していました。小さな映画館ではピアニスト、大きなホールではオーケストラの伴奏付きで映画は上映されていました。映画館では映画と音楽の2つの楽しみを味わうことができたのです。音楽の伴奏…

アンジェイ・ワイダ監督

12日の新聞でアンジェイ・ワイダ映画監督の死去を知る。 4月から5月にかけて、ポーランド映画祭の一本で、アンジェイ・ワイダ監督の映画『約束の土地』(1974年、169分、カラー、デジタル・リマスター版)を観たことを思い出す。 19世紀の工業…

「旅の達人」を聴く

ハクセキレイが人通りのある歩道で虫をついばんでいた。近寄っても逃げる気配がなく餌の虫に夢中になっている。額(ひたい)が白く頭から背中が黒っぽい色をして腹は白い。尾が長く伸びている。 セキレイ科の鳥。全長二〇センチ。尾が長く黒色で、背面と胸は…

新刊案内から

岩波書店のPR誌「図書」2016年10月号の新刊案内を見ると、岩波新書の新刊に津野海太郎さんの本で『読書と日本人』が出るようだ。 20日、発売予定。 夏に、津野さんの『百歳までの読書術』を読んでいた。 リチャード・ブローティガンの『アメリカの鱒…

別盃の酔の尾かすか夜半の虫

街路樹のノグルミ(野胡桃)の実が色濃く茶褐色になっている。 表面を一寸(ちょっと)触ってみると硬くハリネズミのような棘(とげ)だ。 クルミ科の落葉高木。日当たりのよい山地に生え、高さ一〇メートル。葉は長楕円形で羽状複葉。六、七月ごろ、黄色の…

秋深く野菊ばかりぞ今日も濃く

秋分が過ぎても暑さが残る。曇り、最高気温31℃、最低気温22℃。 吹く風は乾いている。コスモスが咲き、柿が稔る。 彼岸花が見られる季節になった。長い茎の先に赤い花を開く植物だが、群生している赤い花の中に白い花の彼岸花が見られた。珍しいので近く…

映画『けんかえれじい』

日活は、1912(大正元)年に創業し、100年を超える長い歴史を持つ映画会社です。太平洋戦争の時代、戦時下の統制で、いったん映画の製作を中断しますが、1954(昭和29)年に製作を再開してからは、石原裕次郎をはじめ、小林旭、赤木圭一郎、吉…

野は林檎町はあかあか晩鴉に満つ

無花果(いちじく)の収穫の季節を迎えている。 小学生の頃、隣にイチジク畑があり、畑の持ち主から頂いたものである。 余ったイチジクでジャムを作ったりした。 夏休みにはカミキリムシがイチジクの樹にいて、沢山捕まえていた。昆虫少年はカミキリムシを農…

みすず書房の新刊

来月(10月)のみすず書房の新刊で、ロジェ・グルニエの『パリはわが町』と保坂和志の『試行錯誤に漂う』に注目している。 ロジェ・グルニエの『パリはわが町』は宮下志朗訳です。 酒井忠康の『芸術の海をゆく人 回想の土方定一』も注目本。 月刊『みすず…

大都映画の面白さ4

内藤誠著『昭和映画史ノート』に、昭和十年(1935年)に大都映画に入社した俳優の水島道太郎へのインタビューで、吉村操監督の映画『地平線』(1939年)の撮影が大変だった事情が語られている。 原作・監修が大宅壮一で、満蒙国境の大平原で二週間の…

大都映画の面白さ3

内藤誠著『昭和映画史ノート』の「第2章 幻の大都映画とハヤフサヒデト伝説」に、大都映画について月光仮面の作者の川内康範のほかに、加太こうじ、うしおそうじ、浜田知章(当時は大阪の玉造に住んでいた少年)らの発言も引用されている。 うしおそうじは…

大都映画の面白さ2

内藤誠著『昭和映画史ノート』の「第2章 幻の大都映画とハヤフサヒデト伝説」の「大都映画を熱く回想する錚々たるファン」に月光仮面の作者の川内康範の発言も引用している。 川内康範(作家)・・・・・・河合=大都映画は戦時合同で大映になる十七年まで…

大都映画の面白さ

内藤誠著『昭和映画史ノート』を読む。 参照:http://www.heibonsha.co.jp/book/b163045.html 目次 第1章 「大東亜戦争」下の映画少年たち 戦時下に創設された「日本映画学校」とはどのような学校であったのか。筆者は日本映画撮影技術者養成所へ入校した生…

映画『ヤング・アダルト・ニューヨーク』

映画『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(2014年1時間37分、ヴィスタ、カラー)を観に出かけた。 監督は、ノア・バームバック。原題は、WHILE WE'RE YOUNG。 出演は、ベン・スティラー、ナオミ・ワッツ、アダム・ドライバー、アマンダ・サイフリッド…

蜻蛉行くうしろ姿の大きさよ

10日、曇り、最高気温30℃、最低気温21℃。風もなく穏やかである。 ひらひらとアオスジアゲハが舞い、地面に接地した一瞬を身近に観察できた。翅(はね)の一部が欠けている。 「月に飛び月の色なり草かげろふ」 「鏡面に薄羽かげろふ垂れとまり」 「草…

新刊案内から、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督

「図書」2016年9月号の新刊案内に、『レッドタートル ある島の物語』が掲載されている。マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット原作、池澤夏樹の構成・文。 《詩情あふれるマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督初の長編アニメーションを絵本化。池澤夏…

蚊起きあがる倒れし馬の起きる様

街路樹のノグルミの果実が鈴なりになっている。 棘(とげ)を触ると堅い。見た目はハリネズミのような感じがする果実である。 「夜の木犀老(おい)の聲音はのんどより」 「秋の蠅一つ眞水の上に死す」 「蚊起きあがる倒れし馬の起きる様」 中村草田男の俳句…

「ミュージック・イン・ブック」を聴く

曇り、最高気温30℃、最低気温26℃。北寄りの風が吹く。 四国の南に台風があり、雲がスローモーションで西に移動している。 7日は、二十四節気のひとつ白露だ。白露とは葉に露を置く。 秋分の十五日前である。 夜のNHKラジオの番組で、「ミュージック・イ…

対談「にっぽん そぞろ歩き」

『望星』9月号の対談「にっぽん そぞろ歩き」は、今回は第3回で「時代を彩る、忘れえぬ音楽」と題して、池内紀さんと川本三郎さんの対談が掲載されています。 三ヵ月に一度の紙上対談ですが、3月号が第1回で、「東京の味わい方」でした。 今回の冒頭を一…

ロバート・クーヴァー著『ようこそ、映画館へ』

「一冊の本」9月号の広告で、ロバート・クーヴァー著『ようこそ、映画館へ』が、越川芳明訳で出ているのに注目しました。 『ようこそ、映画館へ』の翻訳者の越川芳明さんが、豊崎由美さんとトークショーを開催されるようです。 東京・下北沢 B&Bにて 越…

青空は遠夏山の上にのみ

先日、公園の樹木にモミジバフウの葉っぱと果実を見つけた。 葉の形がモミジの葉っぱに似ている。モミジよりも大きな葉っぱだ。 果実の形が、刺々(とげとげ)しい。 「霧うすき小諸城址に入らんとす」 「蝉咽ぶ他郷信濃の古城址に」 「城頭の夏芝に枯れ一つ…

『稲垣足穂 飛行機の黄昏』のこと

『新刊展望』9月号の「今月の主な新刊」で注目したのは、『稲垣足穂 飛行機の黄昏』である。 版元の平凡社の内容紹介は、 《独特のモダニズム感覚で、今も根強い人気を誇る稲垣足穂。月や星への憧れ、ヒコーキ野郎たち礼讃、神戸の街への偏愛、そして幼少期…

映画『ロング・トレイル!』

ケン・クワピス監督の映画『ロング・トレイル!』(2015年、1時間44分、シネスコ、カラー)を観に出かけた。原題が、A Walk in the Woods。 中高年の観客が多し。 出演、ロバート・レッドフォード、ニック・ノルティ、エマ・トンプソン。 「エンド マ…

「戦禍に生きた俳優たち」のこと

講談社のPR誌「本」の連載で「戦禍に生きた俳優たち」(堀川惠子)を毎回楽しみにしている。(筆者の堀川惠子さんは、8月5日の中国新聞に文を寄せていた!) 今月の9月号は、「伝説の舞台から『無法松の一生』へ」と題して、堀川さんは俳優の丸山定夫の演…

青栗大樹なぞへの影みな団々と

23日、晴れる。最高気温36℃、最低気温26℃。 二十四節気のひとつ処暑で、暑さがしのぎやすくなる頃というけれど、まだ熱帯夜がつづいている。連日のニュースで、熱中症の話題が報じらる。 「山の日」の栗の樹。 「青栗大樹なぞへの影みな団々と」 「青…