「特集・新藤兼人のシナリオ」からの一本。
7日、溝口健二監督の『我が恋は燃えぬ』(1949年、松竹、84分、白黒)を観る。
脚本は依田義賢、新藤兼人。撮影が杉山公平で、美術を水谷浩。
出演は田中絹代、水戸光子、菅井一郎、小沢栄太郎。
6月プログラムより引用。
明治時代の自由民権運動に身を投じた女性の半生を描く。平山英子は、恋人の自由党員・早瀬を慕って上京するが、実は早瀬は政府のスパイだった。その後、英子は重井という活動家と結ばれるが、やがて重井も英子を裏切ることに・・・。
明治十七年の岡山の牛窓へ遊説にやってきた岸田女史(三宅邦子)の演説の影響で自由民権運動に参加した平山英子(田中絹代)の物語。
鹿鳴館で舞踏会をやっている鹿鳴館時代。
英子の家の小作の娘で借金のために身売りされる千代(水戸光子)が東京へ行くことになるのと同時に英子も恋人早瀬(小沢栄太郎)を追って上京した。
だが、英子は頼りにしていた早瀬が、こともあろうかお金のために政府のスパイになっていた。
失望し裏切られた英子だったが、同じ自由民権運動の指導的な活動家だった重井(菅井一郎)と結ばれ、重井らと秩父の武装蜂起事件に参加した。
事件の時に製糸工場で女工が拷問などひどい仕打ちをされていた。
その中に千代(水戸光子)がいた。痛めつけられて自暴自棄になった千代は工場へ放火した。
事件に参加した重井と英子、千代らも逮捕され、監獄へ入れられた。
千代と英子は同じ監獄で再会する。
野外での労働の看守を宇野重吉が演じている。囚人らは菅笠(すげがさ)をかぶって、二人一組で岩石を積んでもっこ担ぎをするのだが、千代は英子と組んでもっこ担ぎをするのだった。
その看守が宇野重吉。
明治二十二年の新憲法発布の恩赦で、重井や英子ら自由民権運動の活動家や千代らも出獄する。
行くあてのない千代を英子は引き取った。
重井(菅井一郎)は最初の衆議院選挙に立候補し当選する。壮士の一人を鶴田浩二が演じている。
だが、重井の千代との不倫が発覚し、英子は重井と別れて牛窓へ戻ろうと汽車に乗った。
今度こそ自分の手で婦人解放のために故郷に女子教育のための学校を作ろうと決意して・・・。
汽車に揺られていた英子の前にふと見上げると千代(水戸光子)が立っていた。
千代も重井の元を去って再起しようと英子(田中絹代)を追って来たのだった。
鹿鳴館時代の鹿鳴館でのダンスパーティーの模様、伊藤博文や板垣退助とみられる政治家も登場し時代考証的にも納得のいく筋書きになっている。
山田風太郎の明治物の作品にちょっと似た味わいがある。