成瀬巳喜男監督の映画『稲妻』のユーモア

映画「稲妻」

 26日、午前5時半過ぎ、月が南西の空に高く昇っていた。快晴である。隣り合うように東に木星が輝く。
 27日、午前5時半過ぎ、快晴で天頂付近に下弦の月が見られた。左に並ぶように木星があり、南の空にはシリウスが輝く。朝の最低気温16℃。最高気温は27℃あった。

 「家族の肖像 ホームドラマの軌跡」と題して家族を描いた作品の上映会の一本で、成瀬巳喜男監督の映画『稲妻』(1952年、大映、87分、白黒)を鑑賞。
 出演は高峰秀子浦辺粂子、三浦光子、村田知英子、小沢栄、香川京子根上淳
 9月プログラムに、
 林芙美子の同名小説の映画化。一男三女の父親がそれぞれ違うという一家の物語。今の生活に不満を感じていた末娘は、母や兄たち不甲斐なさに愛想をつかし、家を出て自立しようとする。濃密な生活感のなかで家族の葛藤が描かれる。

 何度か観ているので、今回印象的だったシーンについて書いてみます。
 東京の観光バスのガイドが高峰秀子で、バスは銀座の通りを走る。
 バスの窓から観光客が眺める銀座の光景は、柳並木が連なる道なのだが、柳の樹齢がまだ若い。
 細い幹の柳である。戦争が終わって7年後の銀座の樹木の映像である。
 隅田川に架かる両国橋と高峰秀子のガイドの説明のシーン。
 銀座の交差点をバスの進行方向に対して路面電車が横切る。
 まだ都市交通網に路面電車が活躍していた時代である。
 もちろん銀座の地下鉄の入り口も見られる。
 両国橋と隅田川の当時の光景が映されている。
 蕎麦を食べるシーンが何度かあるのだが、夏に蕎麦を食べている。
 素麺(そうめん)ではなく、蕎麦を食べている。
 蕎麦を箸でつまんで上に持ち上げ口へ運びすする場面がとても美味しそうにみえた。
 母や兄、姉らの不甲斐なさに愛想をつかして、郊外の住宅地へ友人の手づるで間借りして引越しをした清子(高峰秀子)だった。
 家主の老婦人が、引越しをした清子に、手打ちの蕎麦を出してくれて清子が蕎麦を食べるシーンがユーモラスで思わず笑った。
 家主から手打ちの蕎麦を作ったので食べなさいと勧められて、清子が箸で持ち上げるのだが麺(めん)が細長くて、いくら持ち上げてもつながっている。