政岡憲三の『くもとちゅうりっぷ』


 今月(12月)は、「蘇ったフィルムたち〜東京国立近代美術館フィルムセンター復元作品特集」である。
 5日、映像文化ライブラリーで「短編集1」(11作品、77分)の上映会。
 上映の前に、学芸員の説明があった。今回の特集が、フィルムセンターとの共催で、Fシネマ・プロジェクトの一環として開催し、全国巡回する企画であるという。*1

 
 『東京行進曲』(1929年、服部小型映画研究所、3分、白黒)
 『黒ニャゴ』デジタル復元版(1929年、千代紙映画社、作画・大藤信郎、3分、白黒)
 『村祭』デジタル復元版(1930年、千代紙映画社、作画・大藤信郎、3分、染色)
 『國歌 君か代』(1931年、千代紙映画社、作画・大藤信郎、3分、白黒)
 『大きくなるよ』(1931年、Iida Pictures 監督・飯田東吉、3分、白黒)
 『茶目子の一日』デジタル復元版(1931年、監督・西倉喜代治、7分、白黒)
 『なまくら刀(塙凹内名刀之巻)』デジタル復元版・再染色版(1917年、小林商会、作画・寺内純一、2分、染色、無声)素材提供・松本夏樹氏
 『浦島太郎』デジタル復元版・再染色版(1918年、日活向島、作画・北山清太郎、2分、染色、無声)
 『漫画 瘤取り』(1929年、横浜シネマ商会、監督・青地忠三、作画・村田安司、10分、染色、無声)
 『漫画 二つの世界』(1929年、横浜シネマ商会、作画・村田安司、11分、染色、無声)
 『くもとちゅうりっぷ』デジタル復元版(1943年、松竹動画研究部、監督・政岡憲三、15分、白黒)


 『東京行進曲』はレコードトーキーというもので、当時流行したSPレコードで音声を発声させフィルムの映像と同調させて観賞したという。
 『東京行進曲』のクレジットに西条八十の名前があった。
 参照:レコードトーキーhttp://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2008-05/kaisetsu_1.html

 政岡憲三監督のアニメーション『くもとちゅうりっぷ』が傑作である。てんとう虫の女の子が蜘蛛(くも)から逃れてチューリップの花に隠れる。追っ手の蜘蛛がチューリップへ迫るが、嵐になって蜘蛛が自然の猛威に翻弄(ほんろう)される。その風雨の描写も素晴らしい。
 学芸員の説明によると、『なまくら刀(塙凹内名刀之巻)』、『浦島太郎』、『くもとちゅうりっぷ』は、デジタル復元の技術で35ミリフィルムに移し替えて再現しているそうだ。

 

*1:「蘇ったフィルムたち〜東京国立近代美術館フィルムセンター復元作品特集」のパンフレット解説より引用。 《短編集1では、サイレントフィルムとSPレコードを同調させる「レコードトーキー」をトーキー版として復元した「黒ニャゴ」や「茶目子の一日」、近年発見された初期のアニメーション「なまくら刀」や「浦島太郎」、日本のアニメーションのパイオニアである政岡憲三の「くもとちゅうりっぷ」などを上映。》