4月、5月は時代劇特集であった。
新藤兼人監督の映画『悪党』(1965年、近代映画協会、東京映画、119分、白黒)を観る。
シナリオは新藤兼人、撮影を黒田清己、音楽が林光である。
出演は、岸田今日子、小沢栄太郎、乙羽信子、木村功、殿山泰司、宇野重吉、高橋幸治。
5月特集パンフレットに、
谷崎潤一郎の戯曲『顔世』の映画化。南北朝時代、足利将軍家の執事として絶大な権勢を誇る高師直が、絶世の美女・顔世に惚れ、術策をめぐらせて彼女をわが物にしようとする。塩冶判官の妻である顔世は、死をもって師直に抵抗する。
高師直(こうのもろなお)の侍従(乙羽信子)が、気まぐれにつぶやいた京の都に絶世の美女がいるという話に、退屈していた高師直(こうのもろなお)は是非ともその美女を手にしたいと想い、侍従を通じて、塩冶判官(木村功)の妻の顔世(岸田今日子)に言い寄ることになる。
高師直(小沢栄太郎)は、侍従(乙羽信子)の進言によって顔世へ、自分が無教養のため兼好法師を呼んで恋文を代作して侍従に顔世へ持って行かせた。
宇野重吉が兼好法師を演じている。
顔世からの返事は拒絶の返事だったが、高師直は、あきらめられず侍従の言葉に浮かされて、ますます顔世を手に入れようと迫るのだった。
顔世を差し出せ、さもなくば北国の戦いに行くことを命じるぞという高師直の脅しに、身の危険を察した塩冶判官は、都から一族の領地である出雲へ逃げ込もうとした。
高師直(こうのもろなお)は、都から出雲へ落ち延びようとした塩冶判官とその家来と顔世らを謀反(むほん)であるとして追っ手を差し向けた。
ただし、顔世だけは殺してはならない。と、追っ手の部下に命じた。
追いつかれて包囲された塩冶判官らは追っ手によって討ち死にし、その妻の顔世も自死してしまった。
塩冶判官は高師直の侍従(乙羽信子)を逃避行に同行させ、顔世と自分の最後を後世に伝えてくれと言い残していた。
そのため、塩冶判官は侍従を生かしておいた。
結局、侍従(乙羽信子)は顔世の首だけを高師直の元へ、都へ持ち帰ったのである。
師直は希望は叶えられず、顔世の首を前にしてただ呆然としているのだったが、(力ずくでは)人の魂はとれませぬ、と、言い放って、侍従(乙羽信子)は高笑いするのだった・・・。
塩冶判官の家来、山城守宗村を殿山泰司が重厚に演じている。
左上の写真で、中央が侍従(乙羽信子)、右の写真で右下に顔世(岸田今日子)。