「ホノルルまで」を読む

 4日、夕方の月が雲間の青空に白く明るかった。東から西へ雲がゆっくりゆっくり移動してゆく。
 台風が近づいている。虫の鳴き声が途切れることなく道端の草むらから聞えて来た。

 日記や紀行文を読むことが多い。夏の某日のことだが、老舗古書店の埃っぽい店先の50円の本棚に、「世界の旅1 日本出発」(1961年)という本を見つけた。
 中央公論社「世界の旅」全10巻の端本である。


 目次
 ホノルルまで         阿川弘之*1
 ナホトカからバイカル湖へ  瀬戸内晴美 ※
 モーターバイク無銭旅行   高橋雄次 ※
 ブラジル航路        湯浅克衛 ※
 どくとるマンボウ航海記   北杜夫  *2 
 北極空路          野平健一 ※
 乗物ファンのヨーロッパ往復   岡部冬彦 ※
 海外旅行についての10章  戸塚文子 *3 
 かしこい旅・強い旅      小田実 ※
 解説 海外旅行学概論     大宅壮一 ※

 ※は書下ろし。


 阿川弘之の「ホノルルまで」は、「出発まで」「ホノルルまで」「ハワイ素描」を収録している。
 昭和30年(1955年)11月28日に、プレジデント・クリーヴランド号で横浜を出帆し、横浜出港後六日目に、日付変更線を東に越し、12月5日にハワイに着いた。
 滞在中はハワイ島のキラウエア火山見物、コナの日系人コーヒー園見学、ホノルルのビショップ博物館で古典フラダンスを見る。
 1956年の正月をホノルルで迎え、元日の朝からハワイのお宮まわりをして歩いた。
 《それにしても、ハワイがのどかな島であることには変わりはなかった。夢見心地のハワイ滞在は、やはり楽しかった。それから六日後に、私たちはロサンゼルスに向けて、ハワイを発った。  48ページ》

 

*1:阿川弘之 「出発まで」と「ハワイ素描」は書下し、「ホノルルまで」は『空旅・船旅・汽車の旅』(中央公論社)より収録。

*2:同名の書(中央公論社)の全篇収録

*3:『ヨーロッパ三等旅行』の一部を六月社の好意により収録し、著者が再構成と書下しを加えた。