「生誕100年 宇野重吉特集」からの一本。
田坂具隆(ともたか)監督の映画『乳母車』(1956年、日活、109分、白黒)を観る。観客に女性が多い。
出演は、芦川いづみ、石原裕次郎、新珠三千代、宇野重吉、山根寿子、中原早苗。
美術が木村威夫、音楽は斎藤一郎である。撮影は伊佐山三郎。
石坂洋次郎の同名小説の映画化。主人公のゆみ子は、父(宇野重吉)と愛人の間に赤ん坊がいることを知る。ゆみ子は赤ん坊の将来を思い、愛人の弟の宗雄とともに、複雑な人間関係を前向きに乗り切っていこうとする。アクション路線が確立する以前に石原裕次郎が主演した文芸作品。 (特集パンフレットより)
ゆみ子を芦川いづみ、ゆみ子の父で桑原次郎を宇野重吉、母のたま子を山根寿子が演じる。
新珠三千代が父の愛人の相沢とも子で、その弟の相沢宗雄が石原裕次郎で学生である。
父が愛人との間に生んだ赤ん坊の存在を知り、ゆみ子は驚く。
母はそのことに気づいていたが、黙って知らないふりをして夫に対する復讐をしていた。
だが、ゆみ子は父の愛人と赤ん坊に、一度会ってみようと決心した。
芦川いづみのゆみ子が、相沢とも子(新珠三千代)の住む東京の九品仏駅の近くの家を訪ねたときに、その弟の石原裕次郎の宗雄が玄関に出て来た。姉がただ今外出中ですが、と言って芦川と石原の初対面の場面だが、石原裕次郎が元気があって若々しい。
戻って来た姉のとも子(新珠三千代)とゆみ子(芦川いづみ)が話している間に、宗雄は赤ん坊を乳母車に乗せて出かけてしまった。
九品仏浄真寺の境内で、ゆみ子は宗雄が乳母車に赤ん坊を置いたまま昼寝をしているのを見つけ、いたずら心で、勝手に乳母車をとも子の家へ戻して自分はそのまま帰った。
ふと目を覚ました宗雄が乳母車が見当たらず大あわてで捜し、警察へ届けて家に戻ると乳母車があった。
ゆみ子のしわざだと分かって怒る。
この騒動がユーモラスで可笑しかった。この映画の名場面。
映画のロケ地に、鎌倉駅、九品仏駅、九品仏浄真寺の境内、昭和31年当時の銀座の百貨店の屋上でアドバルーンを上げるアルバイトをしている石原裕次郎、鎌倉の通りや店、鎌倉の祭で通りをパレードをする人々、こういった当時の映像が貴重に思える。
ラストで芦川いづみと石原裕次郎が、赤ん坊大会に出場する場面が面白かった。(必見!)
芦川いづみが赤ん坊の母親に変装するために衣装を買いに行って戻って来た。
その母親に変装した芦川いづみの姿が可笑しく笑いを誘う。
多数の参加者でにぎわう赤ん坊大会で無心に競う赤ん坊の姿、そして赤ん坊は三位に入賞するのだった。
賞品はなんと乳母車!