蔵原惟繕(これよし)監督の映画『憎いあンちくしょう』

 
 11月から旅をテーマにした作品や、特色ある地方を舞台にした作品を紹介する「特集・映画による日本紀行」が映像文化ライブラリーで開催されている。

 蔵原惟繕(これよし)監督の映画『憎いあンちくしょう』(1962年、日活、105分、カラー)を観る。
 企画が水の江滝子、音楽を黛敏郎。 撮影は間宮義雄である。
 出演は、石原裕次郎浅丘ルリ子芦川いづみ長門裕之小池朝雄
 
 人気タレントの北大作は、秒刻みのスケジュールで動く毎日に嫌気がさしていた。そんな折、九州にいる恋人のもとに無報酬でジープを運んでほしいという女性の願いを知り、大作は自らジープを運転して一路九州へ。大作の日本縦断の旅が始まる・・・。(12月パンフレットより)


 ロードムービーで、1962年(昭和37年)当時の日本の道路がどのようなものであったかを知ることができる貴重な映像が見られる映画でもある。
 北大作を石原裕次郎、大作のマネージャーで恋人典子を浅丘ルリ子が演じている。
 深夜ラジオのディスクジョッキーやテレビの司会番組や本の執筆で国民的な人気者の大作は寝る暇のないほどの仕事を抱えて日々を過ごしていた。
 ある日、大作は新聞に東京から九州の山奥まで無報酬でジープを運んでくれる人を求めているという記事を目にした。
 その新聞広告の主(ぬし)に興味を抱いた大作は自分のテレビ番組に採り上げようと、直接に依頼主を探して会った。 
 井川美子(芦川いづみ)という若い女性で、九州にいる恋人の医師と離れてジープを買うために東京で二年間働いて貯めて買ったジープを無報酬で九州まで運んで欲しいと新聞広告を出したのだった。
 大作はテレビの番組に、井川美子に出演を依頼した。
 番組に出演した美子に大作は、なぜこのような依頼を新聞広告に出したのか質問をしたのだった。
 離れていても純愛が成立するのかという疑問をめぐって大作と美子が、テレビ番組のなかで論争になり収拾がつかなくなり、大作は自分がジープを九州まで運ぶと宣言してしまった。
 大作のマネージャーの典子(浅丘ルリ子)は、仕事に穴が空くので困ると大反対をし大喧嘩をするが、大作の決意は変わらなかった。
 夜なのだが、すぐにジープを持っている美子のところへジャガーで駆けつけて無理やりにジープに乗り込むと一路国道を西へ向ってハンドルを握った。
 後を追いかけて来た典子(浅丘ルリ子)も大作が乗り捨てたジャガーで大作のジープを追った。
 テレビ局の番組のスタッフ、一郎(長門裕之)らも車に撮影機材を積んで大作のジープの走行するのを撮影してテレビで放送しようと追いかけて来るのだった。(テレビ局の車で追いかけてパパラッチ的な盗撮をしている!)


 名古屋につくと、テレビ放送で大作がジープを運転して九州へ向っていることを知った人々が大作をひと目見ようとジープを取り囲んだ。
 その後、ジープは京都の三条大橋にたどり着く。(食堂へ入った大作は客からその行為を賛否の議論を吹っかけられて騒動になる。)
 京都の五重塔のある東寺の境内で大作のジープを代役の男に運転させて大作の九州行きを止めようとした典子だったが、大作は振り切って出発した。
 大阪に着く。テレビ放送を見た人々が大作(石原裕次郎)を見ようと大群衆が取り囲む。それから途中、明石からはフェリーで大作は四国へ渡り、追いかける典子(浅丘ルリ子)のジャガーの追跡をまた振り切った。
 一時は大作(石原裕次郎)のジープを見失った典子だったが、地図を見て、岡山の宇野港に先回りをし、四国からのやって来たフェリーに大作のジープを見つけた。

 二人の追いつ追われつの国道を走る自動車なのだが、国道といえどもまだ舗装がされていなくて砂煙が上がる。
 二台の車は尾道へたどり着いた。尾道の街並みと向島との間の海の光景が映されている。
 尾道で二人は別々に宿を取って眠るのだが、翌朝、朝早く大作はジープで出発する。
 音で気づいた典子(浅丘ルリ子)はすぐにジャガーで追いかけた。
 広島で相生橋ジープは渡る。橋の上に路面電車が見られる。
 山陽路の国道を走る二人の自動車は砂埃(すなぼこり)を上げながら走る。未舗装の国道なのだ。
 さすがに、関門トンネルはコンクリート舗装されている。

 そして、九州は博多に着く。典子は祭りの群集に取り囲まれる。
 大作は典子を群集から救い出した。
 九州の山地を自動車は登る。険しい山道で、典子のジャガーは坂道を登れなくなり、大作がジープでジャガーをロープで結び引っ張った。だが、ロープが切れてジャガーは谷底へ転落しそうになった。
 危機一髪で大作は典子を救い出した。助かると同時にジャガーは谷底へ転落した。

 山村の診療所へジープで乗り付けて井川美子(芦川いづみ)の恋人の医師(小池朝雄)にジープを渡そうとした。そこへヘリコプターが舞い降りてきて、テレビ局の一郎(長門裕之)と井川美子(芦川いづみ)らが降りて来た・・・。二つのカップルの純愛をめぐる葛藤がラストでひとまず決着する。
 石原裕次郎浅丘ルリ子の主演する熱い青春映画である。浅丘ルリ子が魅力的に奔放に演じているのが印象的であった。
 マスコミの描き方が戯画的であるのだが、これは今見てもマスコミは余り変わっていないようである。
 菅原通済黛敏郎の二人が、大作が司会を勤めるテレビのトーク番組にゲストで出演していた。