炎天や早や焼土とも思はなく


 街路樹のナツメやノグルミの樹が実をつけている。
 ノグルミやナツメの実が鈴なりである。
 最高気温31℃、最低気温23℃。


 「炎天や假(か)りに設けし出札所
 「炎天や早や焼土とも思はなく
 「梅雨の土間人を待たせて片寄せて


 三句の前書きは、「戦災の新宿ただ廣し」。
 昭和二十年(1945年)の中村汀女の俳句からで、句集「花影」の所収句。

 昭和二十年の「前書き」は、

 日常いよいよ不自由となり、都下鶴川から三里入つたところまで米や野菜の買出。あれだけの荷物をよく背負つたものである。やがて有難い平和な日が来て、疎開してゐた友達もそれぞれ帰京。また會へるやうになつたのは何よりうれしいことだつた。
 十一月、母を訪ひお互の無事を喜んだ。