ブザー鳴る夜半の銀河の行方かな

 街路樹のプラタナスの幹にクマゼミが鳴いている。
 翅(はね)が透明だ。体は黒っぽい色をしている。
 観察しているクマゼミは鳴いていないので、メスのようだ。

 半翅(はんし)目セミ科の昆虫。体長約五センチ、翅(はね)の端まで約六・五センチ。光沢のある黒色で、翅は透明。東京以南に普通にみられ、夏の朝、樹幹でシャーシャーと鳴く。うまぜみ。  『大辞泉


 「空襲激化、この夏揚羽多し」の前書きの後に、


 「去りがての百合の揚羽の他にもまた
 「色變り次の揚羽も間なく来る
 「ブザー鳴る夜半の銀河の行方かな


 昭和二十年の中村汀女の俳句です。
 「ブザー鳴る夜半の銀河の行方かな」のブザーは、空襲警報のことではなかろうか。
 句集「花影」の昭和二十年に、「都下鶴川から三里入ったところまで米や野菜の買出。あれだけの荷物をよく背負ったものである。」という前書きがあります。