蜻蛉行くうしろ姿の大きさよ

 10日、曇り、最高気温30℃、最低気温21℃。風もなく穏やかである。
 ひらひらとアオスジアゲハが舞い、地面に接地した一瞬を身近に観察できた。翅(はね)の一部が欠けている。


 「月に飛び月の色なり草かげろふ
 「鏡面に薄羽かげろふ垂れとまり
 「草かげろふ吹かれ曲れし翅のまま
 「はたはたに影及ばせば飛びにけり
 「蜻蛉行くうしろ姿の大きさよ


 中村草田男の俳句で、句集「長子」(昭和十一年、1936年)の所収句である。 
 「蜻蛉行くうしろ姿の大きさよ」の句は、草田男が自由自在に飛ぶ小さな昆虫の蜻蛉(とんぼ)の姿に驚いている。
 小さな蜻蛉なのだが、草田男の目には雄大なる自然の中、大空を舞うその姿が大きく拡大されて映った。