10月は、監督、脚本、撮影、美術など、スタッフとして日本映画を支えた広島ゆかりの映画人の作品を特集します。(10月プログラムより)
「特集・広島ゆかりの映画人」から山本嘉次郎監督の映画『綴方教室』(1938年、東宝映画、86分、白黒、35ミリ)を観る。
出演、高峰秀子、徳川夢声、清川虹子、滝沢修。
当時、ベストセラーになった作文集の映画化。東京に住むブリキ職人の一家を主人公に、その日常生活を子どもらしい素直な眼で捉えたエピソードが展開される。高峰秀子の少女時代の代表作の一つ。
冒頭、タイトルが出てキャストやスタッフの名前が出る箇所がとてもモダンでスマートな印象だ。
撮影は三村明である。スタッフの製作主任に黒澤明の名前がある。
小学六年生の正子役を高峰秀子、父親を徳川夢声、母親を清川虹子が演じている。
滝沢修は正子の担任の先生役だ。綴り方運動に熱心な若い教師を颯爽と演じている。
路地で馬が引く荷馬車がぬかるみにはまり動けなくなった光景があるのだが、抜けるまでの一部始終を撮影している。
通りがかりの人が集まり、荷馬車をぬかるみから抜け出すのを協力する。当時、主人公の住む葛飾はまだ荷馬車が使われていた。
雨降りの日の家の中からまた外の路地を足早に歩く人々の流れなどの映像が印象的である。
子どもの素直な目でありのままに書いた綴り方文章が「赤い鳥」に掲載されたことで取り上げられた人が文章を見て侮辱されたと怒り、正子の父(徳川夢声)が仕事を失う。家族が貧困におちいり、卒業もままならないが、担任の支援もあって父も仕事を得て無事に正子は卒業していく。