宇野千代の故郷、岩国を歩いた時の話

 山本五十六が東京出張の時、戦艦大和の停泊地であった柱島近くから岩国へ上陸して、夜行列車に乗り換えるのが岩国駅だった。宇野千代毎日新聞に『生きてゆく私』を連載していた頃、路上観察と称して岩国の古い家並みを歩いた。西岩国駅から錦帯橋へ向かう家並みに、昭和初期の頃の建物があった。写真館などが特に印象に残っている。道をここの住民の人に尋ねたことがあった。話がいつのまにか戦争中のことになり、その婦人は「B29がこの真上を通って行ったんですよ。駅前が空襲にあったんです。」と言われたのを今でも思い出す。
 錦帯橋を渡りきった右岸を川下へしばらく歩いて行くと川西という街並みに出る。この辺が宇野千代の生家になる。