化け物屋敷探検記と稲垣足穂

青いアサガオ

 朝アサガオが咲いていた。青い色である。
 午後は夕立になった。激しい雨と雷だった。
 「お化け屋敷をさがしてあるいている。」と、種村季弘は『好物漫遊記』1985年刊(筑摩書房)の「化け物屋敷探検記」を始める。

 ここは備後三次(広島県三次市)。私は出雲の松江から広島行のバスに乗って、ここで途中下車したのである。この町にお化け屋敷があることを、車中でふと思い出したのだ。  103頁

 と、種村季弘は三次(みよし)の町で、お化け屋敷を探して歩く。
 三次の化け物屋敷の話は、平田篤胤の聞書き『稲生物怪録』や広島藩の町医、進藤寿伯の『耳の垢』にあるとして、

 そういえば、三次の化け物屋敷の話は、巌谷小波の『平太郎化物日記』や稲垣足穂の『余は山ン本五郎左衛門と名乗る』にも小説化されている。やや換骨奪胎してはあるが、泉鏡花の『草迷宮』も原話はこれである。だから物語の大筋はご存知の方も多いことと思う。  103〜104頁

 私は、三島由紀夫が絶賛した稲垣足穂の小説『山ン本五郎左衛門只今退散仕る』でこの物語を読んだ。
 種村季弘の歩いた道をたどっていくと、駅前から西へ歩いて巴橋を渡り、「旧三次の市街」へと進み、城下町の町割りの残っている地区を散策しているようだ。
 稲垣足穂の作品は映画のシナリオのようなところがある。
 映画化すると面白いかもしれない。