ナツメの木と長谷邦夫の『漫画に愛を叫んだ男たち』

ナツメの木

 昨夜、コオロギが何匹かが交互に鳴いていた。リーリーリーと澄んだ鳴き声だ。姿は見えねどもその声に秋を感じる。朝のアサガオは紫が蔓(つる)にとびとびに咲いていた。白に赤の混じった色、絞りになった色のアサガオも目を楽しませてくれる。
 街路樹のナツメの木に実が鈴なりになっている。熟して赤くなっていた。高い枝の先まで実を付けていた。
 夕方、公園の池へ寄り道した。イチョウの木に実がなっていた。銀杏(ぎんなん)も鈴なりに実をつけている。百日紅さるすべり)の花もやや小ぶりに咲き続けている。
 そばの池のコンクリートの縁に小さな蟹(かに)がいた。その蟹のそばにも小さなカエルが池の方を向いて、ちょこんと座っていた。この二匹は15センチくらい離れてじっとしている。蟹は片足を池に入れた姿勢のまま動かない。
 睡蓮の葉が密集していない水面の中で動くものが見える。メダカの群れのようだ。水は透明で空が映っている。睡蓮の花のつぼみが水中に見えた。
 カエルはハスの葉に座っているものや、水中に潜んでいるものがいる。コンクリートの池の縁には大きなカエルも池へ向いてじっとしていた。
 
 先日、池でカエルとメダカを見ていた時に、お会いした人から、

 そうなんです。PARISとこちらTAVERNY,MALAKOFFで、原爆展が行われます。
 TAVERNY市には広島から、被爆体験者の方が証言に来てくれることになっています。

 と、メールをいただく。
 ハスの池で、この人の版画作品を見せてもらった。アクアチントの技法を使っている。
 お連れの人は、空き缶を使ってピンホール・カメラを自作していて、それで風景を撮っていた。フイルムはモノクロームを使っているという。


 一月前に、武居俊樹の『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』が、(文藝春秋)から出た。まだ読んでいない。先に、長谷邦夫の『漫画に愛を叫んだ男たち』2004年刊、(清流出版)について書いておこう。もっとも赤塚不二夫に近いところにいた人の回顧録。この本は昨年、読んだので思い出しながらになる。
 漫画の制作に分業を取り入れた会社組織のフジオ・プロで起きた出来事がつづられる。
 視点は、長谷邦夫さんから語られている。ひとつの組織にも山あり谷ありで、そういうことがひとつひとつ書かれている。
 経理を担当されていた人の不正(?)事件やら、驚くようなことがあったり、海外旅行の話があったりとめまぐるしいほどの出来事がちりばめられている。タモリがデビューするきっかけの事情なども興味深い。アシスタントの人たちの独立から活躍されていく様子なども書かれている。
 長谷邦夫さんの作品で、似顔絵を協力された木崎しょうへいさんについて、少しふれていただければと思った。パロディ・マンガでの合作、協力関係で。
 タイガー立石さんについての話もよかった。帰国されてからの立石さんのマンガへの批評など、かなり厳しく語られているが、正直に見られていると思った。
 引き出しの多い人なので、今後も注目したい。