火星と稲垣足穂の『宇宙論入門』

納曽利

 日が暮れるのが早くなった。昼間は晴れ上がっていたが、一時しぐれ雨があった。つむじ風も吹いた。すぐに天気は回復して晴れ上がった後、やや肌寒くなる。
 夕方、南西の空に宵の明星の金星が明るく輝いている。8時ごろの東の空に高度三十度ばかりの位置に火星が見えた。色は赤くオレンジ色がかっている。今夜が地球に大接近している頃なんだなあ。当分、このくらいの明るさで火星は眺められる。
 稲垣足穂は戦争中に望遠鏡を買って星を眺めていたらしい。人々が戦時体制のなか軍需品の増産に励んでいた時、星に夢中になっていた。もっとも、望遠鏡はすぐに売り払ってしまったらしいが。稲垣足穂の『宇宙論入門』(河出文庫*1では、「僕の〝ユリーカ〟」や「ロバチェフスキー空間を旋りて」と楠田枝里子の解説「ファンタシウム・フラグメント」が読ませる。
 私は反射望遠鏡木星の衛星を4つ観たことがある。例のガリレオ・ガリレイが1610年に発見した衛星である。やはり、木星のそれらの衛星を見て感動した。