海鵜と野尻抱影の『星三百六十五夜』

蘇利古

 晴れ上がった青空。正午過ぎに川を渡っているとき、川面(かわも)に一羽の水鳥が浮いていた。黒っぽい色の鵜(ウ)だ。久し振りに出会う。川と言っても、このあたりは海水も混じっている川なので海鵜(ウミウ)だろう。見ていると尾羽ねを空へ揚げると、くちばしから水の中へ、あっという間に潜って行った。いさぎよい潜りっぷり。動きに無駄がない。潜るとなかなか浮き上がってはこない。川面(かわも)の下で、魚を追いかけているのだろう。ことわざにある「鵜の目鷹の目」をふと思い出す。
 夕方、宵の明星の金星が南西の空に輝いていた。高度は二十度くらいの位置。金星が没して見えなくなるころ、東の空には地球に大接近している火星が、赤くオレンジ色がかって輝いている。高度は三十度くらいで明るく、ひときわ目立つ。
 地上では歩道脇の植え込みで、コオロギが鳴いていた。
 
 星の本といえば、稲垣足穂の作品以外に、野尻抱影の本をよく読んでいたなあ。
 『星三百六十五夜』(中公文庫)、冬の晴れた夜空の銀河や星座を眺めていると、この本を書いた野尻抱影の星座の探し方など参考になったものだ。