『ビッグ・サーの南軍将軍』の文庫化をめぐって

 正午すぎに川を渡っていたとき、一羽の白いカモメが頭のすぐ上を通りすぎて行った。つばさを大きく広げて滑空して来たのだった。さーっと近寄って来て、わたしの頭の上をさーっと去って行った。そのグライダーのようなカモメの後姿を振り向いて見送ると、カモメの位置から少し下がった低いところにトビがグライダーのような飛びかたで飛行していた。
 空はどこまでも青く澄みきっている。街路樹の葉が少し色づきはじめていた。
 夕方、6時ごろ南に月が見える。そこから西へ少し離れて低い位置で、高度十度ほどに宵の明星の金星が明るく輝いている。東の方角を眺めれば、やや高い高度三十度くらいの位置に大接近中の火星がまだまだ大きく見える。赤くオレンジ色がかって光っていた。
 書店の新刊の棚でリチャード・ブローティガンの『ビッグ・サーの南軍将軍』(河出文庫)を見つける。手に取って表紙の写真を眺めてから、文庫化にあたっての訳者の藤本和子さんのあとがきを読む。そもそもこの文庫化は、リチャード・ブローティガンの『ビック・サーの南軍将軍』が出版された頃に読んでいた女性が後に編集者になっていて、この文庫化を強く推し進めたということらしい。なるほどね。うれしいなあ。
 わたしの持っているのは『ビッグ・サーの南軍将軍』1979年新装版初版(河出書房新社)で、今その帯の文を読んでみると、

 こんなに愉快で泣ける話は、まれだ。歯なしの若者リー・メロンとその仲間の生活は、荒々しいアメリカの象徴なのか? さて・・・