『ビッグ・サーの南軍将軍』とコーエン兄弟

 ジョエル・コーエン監督・脚本の映画『ビッグ・リボウスキ』のラストシーンが、リチャード・ブローティガンの小説『ビッグ・サーの南軍将軍』の最後の情景描写に似ている。ふと、『ビッグ・リボウスキ』を思い出していたら、そんな気がしてきた。
 『ビッグ・サーの南軍将軍』で、最後の情景は次のような文章になっている。

 第四の結末として

 一羽の鷗がわたしたちの頭の上を飛んでいた。わたしたちは服を着ると、リー・メロンとエリザベスのいるところへ戻った。ふたりと一緒にロイ・アールがいた。わたしがそのことに驚かなかったのはよかったことだ。
 三人はそろって寄せては砕ける波の中に立って、ロイ・アールの金を太平洋に投げ捨てているのだった。一〇〇ドル札が三人の手からまき散らされる。
「なにをしてるんだい?」とわたしはいった。
 リー・メロンがわたしのほうを振り向いたが、その手からは一〇〇ドル札が散りつづけ、ひらひらと水に落ちる。
「ロイ・アールはもう金はいらんというんだ、だから、海にすてるのを手伝ってるところさ」
「あたしたちだって欲しくはないもの」とエリザベスはいった。
「この金がわたしの役に立ったかといえば、わたしをここへ導いてくれたことだけだ」とロイ・アールが口を開いた。その間も、一〇〇ドル札が鳥たちのようにはたはたと舞って海へ落ちる。
「おまえらにくれてやる」と彼は波に向っていうのだった。「家へ持って帰りな」
 そして、そう、波はいわれたとおりにしたのだった。  191頁

 コーエン兄弟の映画『ビッグ・リボウスキ』については、後で書いてみよう。劇場で観たときの日記があるのでそれで確かめてみるつもり。
 リチャード・ブローティガンの『ビッグ・サーの南軍将軍』での「第三の結末として」の文はすでに以下で引用している。http://d.hatena.ne.jp/kurisu2/20051109