映画『ビッグ・リボウスキ』と小説『ビッグ・サーの南軍将軍』

 河出文庫リチャード・ブローティガンの『ビッグ・サーの南軍将軍』が文庫化された。訳者の藤本和子さんの文庫化への経緯などを読んでいると、久しぶりにブローティガンを読み直してみたくなった。そうして、読んでみて気がついたのが、作品の終わりの場面がコーエン兄弟の映画『ビッグ・リボウスキ』の終わりの場面となんとなく似ているのではないか? ということだった。
 それで、その映画を観たときの日記で、映画の感想などをみてみると次のようなことを書いていた。
 
 映画『ビッグ・リボウスキ』、サロンシネマ1でみる。観客12、3人位。監督、脚本ジョエル・コーエン。主演ジェフ・ブリッジスジョン・グッドマン
 人間のかなしい、おかしさをコーエンは、『ファーゴ』でえがいたようにこの映画でも、みせてくれた。
 ロサンゼルスを舞台に、失業中のさえない中年男がボーリング仲間と誘拐というめんどうな事件にまきこまれ、最後は、三人のうち、ひとりが亡くなることで映画はおわるのだが、なんだか、おかしい変な人物たちだった。太平洋へ友の灰をまいて二人の男が、友をしのぶ場面でおわる。しみじみ、ドタバタ、と。
 ひとりの男はベトナム戦争の傷をひきずっており、何かといえば、ベトナムのことを話にもち出し、まわりの人のひんしゅくをかっているのだが、どこか、にくめない心の持ち主でもある。笑いと恐怖が、ぐるぐるまわっているような物語だった。
 これは、映画・エンターテインメントの本道ではないか。そのいみで、コーエンの脚本は、よくできている。映像の方も、とんでもなく魔術的リアリズム(?)につくられているのが楽しめた。