生きているのはひまつぶし

イチョウの黄

 正午過すぎまで傘がいらないほどの小雨だった。川を渡っている時に通行禁止の橋の欄干にアオサギが一羽いた。別の川岸の浅瀬の中にたたずんでいるのは、これもアオサギで一羽は大きく、残りの二羽はやや小さかった。これらの鳥たちはこの辺に定住しているのかな。
 街路樹で二十五メートルほどの高さのメタセコイアの樹の葉は、赤茶けて枯れていた。紅葉といった風ではなく、杉の葉が枯れたときの色に似ている。カエデの紅葉もきれいだなぁ。
 小学館のPR誌『本の窓』12月号を読む。「私の編集した本」で深沢七郎の『生きているのはひまつぶし』を編集した光文社の編集者の文に注目した。深沢七郎未発表作品集ということだが、内容的には日藝出版から1972年に刊行された深沢七郎の『怠惰の美学』に似ている。三島由紀夫について『怠惰の美学』で、深沢七郎は、

 事件当日どういう気持で受け取ったかって?
 そう、ナァーンか、こう、ケンカ売られたみたいな感じね。なぜかというとね、オレは自分のことだけしか考えず、自分のためにしか生きていないわけですね。ところが、国家を憂えてとか、人のためにとか犠牲になる人は、オレにとってはナァーンとなくケンカ売られた感じになるわけ。  27〜28ページ

 この光文社の本の表紙は『怠惰の美学』の口絵にある若林美宏さんの写真を使ってデザイン装丁している。