多田道太郎の『共同研究の楽しみ 戦中戦後』

 街路樹のメタセコイアの樹がすっかり葉を落としていた。ネムノキも葉がなくなっていた。常緑樹の山茶花などは、落葉樹と違って葉がつやつやして花も咲いている。もうすぐ大寒になるけれど、寒さがそれほど厳しくない。うーん。このまま春という訳には行かないで、戻り寒波があるかも。
 朝日新聞小沢信男の「俳句が楽しい」という連載を読む。今日は、その2で「17字のドキュメント」という題。久保田万太郎の句「竹馬やいろはにほへとちりぢりに」という俳句をとりあげて書いているが、なかなか読ませる。
 その1は「言葉の手品」という題で、「時計屋の時計春の夜どれがほんと 久保田万太郎」という俳句に出会った時の思い出から、俳句におどろいたのです、と言う。そして、俳句とは言葉の手品なんだ! とも。
 NHKラジオ深夜便の「健康百話」で高岡英夫のゆる体操の話を聴く。ゆるゆる、もぞもぞ。緊張をゆるめるってことかな。
 鶴見俊輔対談集『未来におきたいものは』2002年(晶文社)を読みつづける。多田道太郎との対談は「カードシステム事始」という題。「一九四九年に桑原武夫さんが中心になって、京都大学の人文科学研究所で行われたジャン=ジャック・ルソー(一七一二〜七八)の共同研究について触れたんです。」と『本とコンピュータ』という雑誌に「共同研究の楽しみ 戦中戦後」というエッセイを書いたばかりの多田道太郎が、まず話始める。このルソー研究の参謀役だった鶴見さんに尋ねているが、その頃の多田さんのエピソードも微笑ましい。
 共同研究のやり方にカードを使う。そのカードは、梅棹忠夫の『知的生産の技術』の中で提唱された京大カードにどうつながったのか。そういった疑問にも鶴見さんが答えている。ふーむ。そうだったのか。このあたりでの共同研究をめぐっての話は、「未来におきたいもの」という原石がごろごろ転がっているような気がする。

 鶴見 それとね、私たちの共同研究には、コーヒー一杯で何時間も雑談できるような自由な感覚がありました。桑原さんも若い人たちと一緒にいて、一日中でも話している。アイデアが飛び交っていて、その場でアイデアが伸びてくるんだよ。ああいう気分を作れる人がおもしろいんだな。
 梅棹さんもね、『思想の科学』に書いてくれた原稿をもらう時に、京大前の進々堂というコーヒー屋で雑談するんです。原稿料なんてわずかなものです。私は「おもしろい、おもしろい」って聞いてるから、それだけが彼の報酬なんだよ。何時間も機嫌よく話してるんだ(笑)。雑談の中でアイデアが飛び交い、互いにやり取りすることで、そのアイデアが伸びていったんです。
 いま、インターネットで世界中が交流できるようになってきているけど、コンピューターの後ろにそういう自由な感覚があれば、いろんな共同研究ができていくでしょうね。  157頁