空飛ぶソファ

冬の水辺

 暖かい日が続いていたが、今日の寒さは寒の戻りかな。うーん。ぶるぶる。
 『ラパン』2002年冬号を読む。種村季弘の「雨の日はソファで散歩 銀座編」が読ませる。種村さんが銀座をめぐって書かれた本を読み解く紙上散歩といった趣きだ。それも、幕末、明治、大正、昭和と好む時代や場所へ「空飛ぶソファ」に寝ころがって飛んで行く。

 とぼしい書棚でも銀座の本となると何冊かはある。内田魯庵魯庵随筆読書放浪』、松崎天民『銀座』、安藤更生『銀座』、部分的な銀座スケッチなら木村荘八『東京繁昌記』、小島政二郎『場末風流』、吉田健一『東京の昔』・・・・・・。こう並べてみると平成の銀座本が一冊もないのが寂しいといえばさびしい。ナーニ、平成銀座は雨が上がってから自分の足で歩けばいい。いまは空飛ぶソファに寝ころがって、幕末明治大正昭和、銀座とあらば時代も場所も好むがままにござんなれ。どの時代の銀座でも飛んで行けるから大変ありがたい。それにお金もかからない。  『ラパン』25頁

 朝日新聞小沢信男の「俳句が楽しい」が連載されている。その4を読んだ。「ちょうとてふてふ」という題で辻征夫の『俳諧辻詩集』から「海峡」という一行詩を取りあげている。この詩集が生まれるまでを辻さんと伴走できたことのうれしさと、この一行詩が昭和初年の安西冬衛の一行詩「てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行った。」に呼応していると記す。辻征夫の一行詩は、

 《蝶来タレリ!》韃靼ノ兵ドヨメキヌ

 「俳句は、出会いと挨拶の文芸なんだ!」と結ぶ。