語り芸の魅力

 春先のうす曇りのような天気だった。ぼっーと遠くまで靄(もや)のかかった曇り空。川の岸に沿ってカモの群れが散開していた。二三羽が一団になって、川の真ん中ではなく岸辺に浮かんで動き回っていた。えさを探しているようだ。
 NHK教育テレビで「私のこだわり人物伝」を観た。鹿島茂が語る山田風太郎だった。山田風太郎の死生観をめぐっての話と小説の魅力など、うん、うん、とうなずくところあり。
 第一回の風太郎の大ウソと司馬遼太郎の小ウソ、これも面白かった。山田風太郎の小説では最後のどんでん返しが、あっとビックリする。あっけにとられる。今回の第四回で、鹿島茂の語る「私のこだわり人物伝」は終わる。二月に放送の「私のこだわり人物伝」は「目利きの肖像ー白洲正子ー」で細川護煕氏。
 ラジオ深夜便は須磨佳津江アナウンサーの担当日で「健康百話」は、高岡英夫の「ゆる体操」の話であった。〈からだをゆるめる、脱力する、という一見単純に思えることが、実は人間本来の姿であり、現代人が忘れている盲点であるといえます。〉とは、高岡英夫のある本での言葉。
 昨夜のラジオ深夜便の「朗読」は藤沢周平の「蝉しぐれ」で、松平定知アナウンサーの話しっぷりがいい。物語の登場人物の声音(こわね)が上手い。久しぶりに語り芸の面白さに引き込まれた。その後の「演芸特選 落語」は、柳家金語楼の「釣りの酒」で、これは聴いた。もう一人の古今亭志ん生の「文七元結」は聴き逃がした。いつの間にやら眠っていたのだった。
 書店で長谷邦夫の本が出ているのを知る。『赤塚不二夫天才ニャロメ伝』(マガジンハウス)。

赤塚不二夫 天才ニャロメ伝

赤塚不二夫 天才ニャロメ伝