サカタ旅日記

 夕方、南南西の空に三日月が朧月のように見える。先日、朝日新聞に連載された小沢信男の「俳句は楽しい」で、芭蕉が大阪の旅宿で重篤になった時に駆けつけた弟子、内藤丈草の句に「大原や蝶(てふ)の出て舞う朧月」がある。まだ、蝶が出て舞う春ではないけれど、三日月は朧月だった。
 川を渡っている時に、その朧月の空を十羽ほどのカモの群れが羽を上下に動かしながら南へ飛んで行った。一列になって、かなり高いところを飛んでいた。隊列を組んで飛んで行くカモのすぐ後、その飛行コースを直角に交わるかのように、カラスが二羽、羽を上下に動かしながらやって来た。こちらの方は西を目指して飛んで行った。それを追いかけるように今度はトンビが二羽のカラスの後を追って行く。夕闇が迫る短い時間での鳥たちの交錯する橋の上での一瞬の光景。
 『ラパン』2001年冬号で、坂田明の「サカタ旅日記」を読んだ。「久しぶりにN.Y.へレコーディングに行く」という題の文章。この文が書かれたころかな。その頃にある画廊喫茶での坂田明の演奏会があって、開演前の誰もいない画廊で坂田さんがサックスを一人で吹いているところを聴かせてもらった。たぶん、練習をされているところだったのだろう。
 『ラパン』2001年春号は、「特集 個性派書店探検術」。