種村季弘の『東京迷宮考』

 晴れ間があるが、ときおり牡丹雪が降ったりして風もあり寒い一日だった。夜から明日にかけて冷え込むという。寒風の中を夕方の空を見れば、月が東の空の高い所に昇っていた。青空に月が見えた。山間部では、かなりの積雪らしい。
 「冬こだち月に隣をわすれたり」と蕪村の句かな。
 種村季弘の対談集『東京迷宮考』*12001年(青土社)を読む。あとがきに、〈この巻には、とりあえず東京論を主にした近代の都市とその変貌を話題にしたものをまとめた。対談の現場から四半世紀に及ぶ時間が流れて、当時語られたことの正誤を検証するには適当な頃合いになったと思う。〉とある。
 そのなかに、田村隆一との対談がある。「変貌する都市」というタイトルで、この本に収録された対談の中ではもっとも早い時期のものである。一九七三年八月二十四日号の『朝日ジャーナル』での対談だ。昨年(2005年)の雑誌『ユリイカ』8月号は「特集・雑誌の黄金時代」というものだった。そこで、四方田犬彦坪内祐三が「雑文家渡世」というタイトルの対談で取りあげていた雑誌の一つが、この頃の『朝日ジャーナル』だったかな。
 田村隆一種村季弘のこの対談は、とても面白い。種村季弘が「わが池袋序説」というエッセイを書いた時に、ヴァルター・ベンヤミンの都市論を借用したその訳を語っているところなど納得するところがあるなぁ。