貧問答、貧の美意識

冬のカモ

 早朝、屋根の上に雪が薄く積もっていた。夜のあいだに降ったのだろう。気温はあまり上がらず寒かった。川を渡っていると、カモが水面を群れて泳いでいた。
 種村季弘の対談集『東京迷宮考』(青土社)を読む。「変貌する都市」というタイトルで田村隆一との対談。

 西脇順三郎石川淳の対談(『西脇順三郎対談集、詩・言葉・人間』薔薇十字社)で石川淳がいっていたことだけれども、久保田万太郎の下町物だって、あれはほんとうの下町じゃないっていうんですね。つくられたもので一種のミニアチュールだ。石川淳も生粋の下町生まれなんだけれども、一回外国という鏡に反射させてそこからかえってきて書いているみたいなところがある。結局、地方の人にとって都会がスペクタキュラスな異界だとすると、都会っ子、町っ子にとっては外国がそれにあたる。  89〜90頁

 うーむ。この指摘は確かにその通りだなぁ。田村隆一が季刊雑誌『都市』を創刊した時に種村季弘にエッセイを依頼した。それが、種村の「わが池袋序説」という題のエッセイで、ロシアへ旅行したヴァルター・ベンヤミンの都市論を借用して書いたという。
 あとがきに、〈バブル崩壊以前に田村隆一さんに「貧の美意識」についての予見をうかがえたのも、いまとなっては何か思い当たるものがある。〉