『貸本マンガRETURNS』の発売

貸本マンガRETURNS

 確定申告の書類を税務署へ提出して、ほっとする。
 正午過ぎに川でカモの群れを見た。いつもと同じ川岸の浅瀬の水たまりに、ヒドリガモの一団が浮かんでいた。その数は一〇羽くらいだった。川を渡る風は冷たい。晴れた空は黄砂が来た時のように、遠くがかすんでいた。そのヒドリガモの群れの中に、一羽の白い鳥が雑(ま)じっている。さかんに、群れの中を動きまわっているが、何だろうか。カモメ? 
 そのヒドリガモの散開している浅瀬の水たまりから、二〇メートルくらい離れた深みのある川面(かわも)に黒い鳥が浮いていた。海鵜だ。
 海鵜は何時(いつ)見かけても、一羽で行動している。単独行動である。これは、この鳥の習性なのかな。浮かび上がった時に、くちばしに何やら魚をくわえていた。お見事。
 『貸本マンガ史研究』の三宅君から、ハガキで3月10日にポプラ社より本が出るという通知が届く。
 『貸本マンガRETURNS』という本で、貸本マンガ史研究会編・著。A5判/336ページ/定価:1800円。
 主な内容は以下の通り。

 〈序章〉 貸本マンガの豊かな世界
 〈1章〉 ヒーロー現る!!―時代劇マンガの世界
 〈2章〉 ミステリ、ハードボイルドの誘惑―探偵ものからアクションまで
 〈3章) 少女たちの夢のゆくえ―少女マンガの世界
 〈4章〉 異世界への誘い―怪奇マンガの世界
 〈5章〉 青春ってなんだ!―貸本マンガの終焉と青春マンガ
 〈終章〉 貸本マンガに溺れて
 〈資料編〉貸本マンガ関係年表・貸本マンガ家リスト1000+α
      主要貸本マンガ出版社リスト
      その他コラム多数掲載     

 ちょうど今、種村季弘の対談集『東京迷宮考』で川本三郎との「昭和三十年代、東京」というタイトルの対談を読んでいる。貸本マンガが描かれた時代を回想して話題にしている。その話が興味深い。種村季弘の体験話も今となっては面白い。川本三郎さんが「種村さん、漫遊記シリーズの一冊として『失業漫遊記』というの書いたらどうですか(笑)。」と語られているところで笑ってしまった。

 川本 つげ義春のマンガだってあれは引越しから生まれている。
 種村 そうそう。彼も一九六七年くらいから後は引越しができなくなって、旅なんだね。
 川本 種村さんだってもう十年以上引越していませんよね。 197〜198頁*1

 『貸本マンガ史研究』16号も3月20日に発売だ。『貸本マンガRETURNS』の表紙に水木しげるの「えっ! とうとう本になるの? よくまあ、こんなメンドーなこと・・・・・・(苦笑)。」とある。

*1:「東京人」一九九四年八月号、初出。