杉浦茂の世界

キボシカミキリ

 ひと月前は、まだ小さな葉だったイチジクの木に、立派な葉が茂っている。思わず近寄って葉を眺めると、昆虫がいた。検索して調べるとキボシカミキリらしい。小学生の頃、夏休みの昆虫採集に、このカミキリムシを捕っていたものだ。イチジク畑に行くと、沢山捕れた。
 杉浦茂による小林秀雄の面白いエピソードが載っていた『アサヒグラフ』は、1994年2月25日号ですね。特集「杉浦茂の世界」。表紙に、〈糸井重里が聞く杉浦茂の86年〉。[書き下ろし新作]「2901年宇宙の旅」から、[競作]スージー甘金・佐々木マキ・小林直子が書く杉浦茂ワールド、とある。
 目次を見ると、呉智英杉浦茂論。それと撮影が、荒木経惟である。
 「糸井重里が聞く杉浦茂の86年」で、小林秀雄に触れたエピソードで、おやっ面白いなと思った箇所は、

糸井 あの方はたしか奥さんが高見澤潤子さんといって、小林秀雄さんの妹さん。もしかすると小林さんとすれ違ったことがあったのでは・・・・・・。
杉浦 田河先生の家でお酒をご馳走になったとき、小林先生とはずいぶん、お話ししましたよ。
糸井 かなりお飲みになる方らしいですね。
杉浦 ええ、すごいですよ。こんなこといっちゃ何ですが、酔っぱらって田河先生の二階から小便しちゃったり。(笑い)
糸井 杉浦先生の漫画を小林秀雄さんは見ていたんですか。
杉浦 ええ、でも、直接批評したり批判したりしたことはありません。そういうことより、人生訓といいますか、これから社会に出ていく青年たちが注意しなければいけないこととか、勉強しなくちゃならないこととか、そういうことを懇々と教えていただいた。
糸井 先生筋には、ずいぶん恵まれていたんですね。当時最高峰の田河水泡小林秀雄が並んで説教垂れるなんて信じられないですよね。杉浦先生の漫画から、自由な雰囲気が漂ってくるのは、安心して認めてくれる人がそばにいたということが大きいんですね。
杉浦 何度も一緒にお酒飲んだんですよ。お酒飲めなかったら、ああいうふうにはいかなかったですね。
糸井 お酒というのは、先生の作品の大きな鍵ですね。
杉浦 重大ですよ。(笑い)  6頁