『散るぞ悲しき』をめぐって

バラの花

 きのうNHKラジオの「ときめきインタビュー」で、「硫黄島に眠る兵士に教えられたこと」と題して、ノンフィクション作家の梯久美子さんの話を聴いた。
 栗林忠道中将をめぐって、取材に二年間を費やして書き上げた本だそうだ。その取材の中で硫黄島も訪れ、この島に眠る兵士と総指揮官の栗林中将が家族に宛てて出した手紙の文面に触れて、その心情を語られているあたりのお話に強く引き込まれた。
 梯久美子さんは、これまでの自分の書いてきたものは、千人以上も取材したが〈自分探し〉に過ぎなかったんだなと、気づいたと仰られていた。この本*1で初めて〈他者〉にぶつかったんだとも。
 ふーむ。この硫黄島で亡くなられた兵士の遺族の方へ、取材で聞くことができるぎりぎりの時期だけに、この本は特筆に価するかもしれない。
 ずいぶん前に児島襄の本で硫黄島の戦記物を何度も読んだことがある。タイトルを検索で調べてみた。『将軍突撃せり=硫黄島戦記=』だ。その頃とても暇だったこともあり、どういうわけかこの本は繰り返し読んでいる。1932年のロサンゼルス・オリンピックの馬術男子障害跳び越しで優勝した西竹一の西戦車隊と栗林中将の戦闘指揮の描写など、児島襄のこの本、今でも読めるのかしら。欧米の社交界バロン西として知られていたエピソードなどもあったなぁ。
 このところ、荒俣宏の『決戦下のユートピア』(文春文庫)と小林信彦片岡義男の『星条旗と青春と』(角川文庫)といった、戦時下ものが手元に集まって来ている。
 小林信彦片岡義男の本は、冒頭あたりの対談は、戦時下の小国民だったお二人の話だし、そういう意味でも、〈戦時下〉ものは大事にしたいね。