イチジクは無花果

イチジク

 イチジク畑にイチジクの実が成っていた。卵大の大きさもいくつか見える。実に見えるのは、花嚢(かのう)と言うらしい。外から見えないが、内部に雄花と雌花をつける。そうすると、イチジクを食べていると、口の中でぷちぷちした小さな種の舌触りがするけれど、これがイチジクの実なのだろうか。イチジクを漢字で書くと無花果
 池内紀の仕事場8『世間をわたる姿勢』(みすず書房)から、『無口な友人』の「万年新入生」を読んだ。あとがきに、〈はじめは背のびして、気どった書き方をしていた。ようやく自分の背丈に応じて語れるようになったのは、十年ほどしてからである。〉というように、『なじみの店』と『無口な友人』は、読みやすい。文章に手を入れたという『風景読本』からは、「影の神さま」と「播州室津」というエッセイが興味深かった。ひとつは、書写山円教寺、もう一つは室津という港町に触れているからだった。
 蕪村に、こういう句がある。「梅咲(さい)て帯買ふ室(むろ)の遊女かな」
 安永五年の句である。
 この句の室津は、四国の丸亀へ蕪村が船で行き来するときに、寄ったことがあったのかな。