梅雨空でどんより曇っている。にわかに雨が降ったり止んだりする。
糸トンボが睡蓮の葉にとまっていた。尾の先が水色をしている。
丸谷才一の『絵具屋の女房』*1(文藝春秋)から「インディアンと野球」と「薬を探す」を読んだ。どちらも話が横道に行ったり、脇道へ回り込んだりと面白いエピソードを展開しながらすすむ。たとえば、前者は冒頭で、
アメリカ・インディアンを好んで取り上げる職業が二つある。一つは言ふまでもなく映画監督で、西部劇を作る。これは誰だつてわかりますね。代表者を一人だけあげるとすればジョン・フォードになるでせう。
そしてもう一つの職業は人類学者。考へてみれば当り前だけれど。
でも、西部劇でインディアンをどう扱ふかは、じつにむづかしい問題です。昔は気楽に構へてバタバタ殺してゐたけれど、だんだんさうゆかなくなつてきた。 214頁
と、始まる。その後、逢坂剛と川本三郎の『大いなる西部』*2(新書館)という対談本から引用して、対談するお二人が〈インディアンのことになると弱りきっている〉箇所を示す。
このあたりは序の口で、アビ・ヴァールブルクのプエブロ族の研究や、レヴィ=ストロースの研究を取り上げ、どこへ連れて行かれるかと身構えていると、ロビン・フォックスというイギリス生まれの人類学者の研究に話題を持って来て、その後いつのまにやら野球の話になっているというエッセイだった。