ドングリの木

ドングリ

 台風一過の青空である。街路樹の葉や枝が道にバラバラに散らばっていた。歩道にも木の実を見た。まだ緑色をしたドングリである。そばに、背の高いコナラの木が立っている。高さは十五メートルはあるか。枝を張ったその下の地面に、数えきれないほどのドングリの実が落ちていた。幹にプレートがくくり付けてあり、小学生が書いたような文字で、〈コナラ ブナ科 秋の黄葉がきれいです。どんぐりがなります。〉と書かれている。

ブナ科の落葉高木。山野に自生する。葉は倒卵形で先がとがり、縁にぎざぎざがある。五月ごろ、新しい枝の下部に尾状の雄花、上部に雌花がつく。実は食べられる。材は器具・薪炭用。ほうそ。ならしば。なら。  『大辞泉

 『蕪村遺稿』の句に、「天狗風のこらず蔦(つた)の葉裏哉」があるが、天狗風は、つむじ風で野分の風ではないらしいね。
 江國滋の『俳句旅行のすすめ』(朝日文庫)を読みつづける。明治三十三年九月に横浜からロンドンへ向かった夏目漱石に、「秋風の一人を吹くや海の上」という句があるが、今頃の時期の句かな。