カルデア人と茂田井武の絵

 雲ひとつない青空の日だった。日差しがまだ強くて暑いが、雑節でいえば彼岸である。暑さ寒さも彼岸まで、と言うように朝晩はすっかり秋らしくなった。
 夕方になると、虫の鳴き声があちこちから聞こえる。リーン、リーン。月は夜空に出ていない。月が出ていないので、星がよく見える。
 二十二日の新月の日に、南米から大西洋にかけて金環日食が見られる。一九八八年九月十一日にアフリカ東部、アジア南部、インド洋、オーストラリアで見られた金環日食から1サロス周期後のものである。今回は、大西洋上で観測されることになりそうだ。部分日食はアフリカ、南米で見られる。*1
サロス周期というのは、カルデア人の発見という。カルデア人とは古代バビロニアの南部をさす地域名に住んでいた人。現在のチグリス・ユーフラテス川中流下流地域である。
 『思い出の名作絵本 茂田井武*2河出書房新社)に目を通す。講談社のPR誌『本』2006年7月号の池内紀の連載「珍品堂目録」で、茂田井武という画家について書かれていた。雑事にかまけていて、やっと見つけて手に取れた。一読、「あっ、谷内六郎だ!」 と思ってしまった。池内さんは、〈谷内六郎の絵が週刊新潮の表紙を飾り出したとき、「アッ、茂田井武だ」と思った人がいたのではあるまいか。〉と書いている。山本夏彦の「武数え二十三歳」という文がいい。パリで二人が出会った話。〈茂田井武と私が友となったのは、場所はパリ、昭和五年、武が数え二十三、私が十六の時だった。〉
 これを手がかりに絵日記帳『トン・パリ』を探してみよう。

*1:[サロス周期] saros cycle 日食・月食の周期。一八年一一日を周期としてほぼ同じ状況で起こる。前六〇〇年ごろ、カルデア人が発見。カルデア周期。 『大辞泉

*2:

茂田井武―思い出の名作絵本 (らんぷの本)

茂田井武―思い出の名作絵本 (らんぷの本)