伊藤逸平の雑誌「VAN」のこと

上弦の月

 日が暮れて、南の空に月が眺められた。上弦の月である。高度は三十度くらいかな。
 吉行淳之介の『街角の煙草屋までの旅』(講談社文庫)から、「街角の煙草屋までの旅」を読む。久しぶりに読み返した。旅とは何か、ヘンリー・ミラー自身が書いている文を引用しながら書かれたエッセイ。
 手塚治虫の『ぼくはマンガ家』(角川文庫)に、風刺雑誌「VAN」のことが書かれていることに気づいた。「VAN」の編集の伊藤逸平氏とその功績に、手塚さんが触れているのだった。植草甚一スクラップ・ブックの一冊、『ぼくの大好きな外国の漫画家たち』という本の「まえがき」で、植草甚一が〈スタインバーグのグラフィック漫画にぶつかったときは、頭がフラフラとなったのを思い出すし、それからというもの「ニューヨーカー」誌の漫画を見ては、その漫画家の名前を全部おぼえるようになった。〉と言う。その時期に雑誌「VAN」が発行されていたんだね。