裏番組「奇想の系譜」

月と雲

 夕方、東の空に真ん丸い月が昇っていた。ほぼ満月である。月明かりで明るい夜空だ。雲がゆったりと北から南へ移動して行く。時折、月が雲に隠れ、また姿をあらわす。
 NHK教育テレビの「知るを楽しむ」という番組で辻惟雄の「ギョッとする江戸絵画」が面白かったので、辻さんの本を読んでみた。
 矢島新山下裕二辻惟雄『日本美術の発見者たち』*1に、山下裕二辻惟雄のお二人の対談〈『奇想の系譜』以前・以後〉があり、読むと面白い。山下裕二さんが、

山下 じゃあ、『奇想の系譜』は辻先生のなかでは裏稼業みたいな意識があったわけですか。
 そうですね。いま表に出されちゃって、ちょっと迷惑してるようなところがありますね。実をいうとね、これは裏番組なんだ。  152頁

 とか、

山下 『ホモ・ルーデンス』ですね。大学の教授で美術史なんて教えてるけど、おれはほんとはあそぶのが好きなんだと。先生が書かれてるものはやっぱり自画像なんですよ。
 そうかね。要するに、私のやり方はキーワードみたいなものを使ってやるやり方なんですよ。そして「あそび」をキーワードにしてやってみたら、ぞろぞろ出てくるわ出てくるわ。江戸時代の美術なんてあそびそのものだからね。これはおもしろいと思った。それぞれ動機があるんですね。  177頁