十六夜の雲吹去りぬ秋の風

十六夜の月

 通りすがりの家の垣根から道へ柿の枝が伸びていて、実が鈴なりになっていた。見事な色艶をしている。イチヂクや柿、栗やブドウなどの収穫の秋を実感する。
 夕方、東の空から月が昇って来た。晴れて雲ひとつない夜空である。吹く風が肌に寒いなあ。今日は二十四節気で、寒露というらしいが、あまり聞いたことがないね。

十六夜(いざよい)の雲吹去りぬ秋の風

 『蕪村遺稿』で、安永七年〜天明三年にかけての頃の句である。昨日が満月で、この句がちょうど今夜にふさわしい。
 大型書店でうろうろ探し物をする。探し物の置かれている場所を、検索機器の画面で見ると、〈評論〉のコーナーにあった。南陀楼綾繁『路上派遊書日記』(右文書院)で、読んでみた。
 この〈評論〉のコーナーには、ほかに亀和田武の『この雑誌を盗め!』(二見書房)があった。新刊で、朝日の書評欄に連載していた文章をまとめたものだ。タイトルが、アビー・ホフマンの『この本を盗め!』に似ている。