映画『父親たちの星条旗』と戦費

イチジク

 イチジク畑に実がなっている。あらかた食べ頃の実はもがれて、小さな実が枝に残されているようだ。
 『サンデー毎日』で、中野翠の「満月雑記帳」を読んで、是非観たいなあと思っていた。
 公開されて二日目の最終上映時間から、スカラ座クリント・イーストウッド監督の映画『父親たちの星条旗』を観た。これは、「硫黄島2部作」の第一弾である。制作はスピルバーグだ。混んでいるかと思いきや、空いていた。八百二十八席に三十五人くらいの入りだった。
 一九四五年二月二十三日、硫黄島の擂鉢山をめぐって戦闘が繰り返されている最中に、頂上に立てられた海兵隊星条旗が撮影された。その旗を掲げた兵士六人のうち、三人だけが生き残り戦場から離れて祖国アメリカへ戻される。
 なぜ、この三人が祖国へ戻されたのか。帰国後、三人は英雄として各地で戦争遂行のための国債を国民に買ってもらうためのキャンペーンに動員されるのだった。三人のそれぞれの持った苦悩や野心や沈黙、そして本当の英雄とは? アメリカから見た硫黄島は、思いもよらなかった戦時下のアメリカの事実を明らかにしている。
 一四〇億ドルの戦費を集めるために、三人が戦争の英雄としてキャンペーンに動員されるのだが・・・。ひるがえって当時の日本でも戦費をまかなうための貯蓄のすすめキャンペーンが盛んだった。荒俣宏の『決戦下のユートピア』(文春文庫)に、「貯蓄せよ報国のあかし」というタイトルの文で、膨大な戦費を必要とする消耗戦に突入した国民生活を当時の新聞記事を引用しながら書いている。その事例が、アメリカの戦費集めキャンペーンと似ているのだった。うーむ。
 予告編で十二月九日から公開予定の映画「硫黄島からの手紙」を観た。渡辺謙栗林忠道中将を演じている。

決戦下のユートピア (文春文庫)

決戦下のユートピア (文春文庫)

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