ブルーノ・ムナーリの『闇の夜に』を開く。原題はnella notte buia。
ぽつりと ともしびが
はるか 遠くで
はるか 遠くで
かがやいている
そして朝になる。草原(くさはら)のキリギリス、カタツムリたち、オオツノカブトムシ、クモ、ムカデ、アリや死んだ鳥。
それから、洞穴(ほらあな)だ はいってみようか。
洞穴の壁いちめんに埋めつくされた狩りの絵。
鍾乳石の洞穴をうろついていて、やっと出口にたどりつくのだ。
洞穴から出てみれば、夜でホタルがあかりをともしていた。
中川素子さんが『ブック・アートの世界』(水声社)で、ムナーリが『読めない本』を作りつづけたことをめぐって次のように述べられていた。
たとえば一九五六年の絵本『暗い夜に』の洞穴を形作る切り抜きは、一九五一年の『読めない本 N・12』で試みられているし、一九六八年の『きりのなかのサーカス』のトレーシング・ペーパーの効果は、一九六四年や、一九六六年の『読めない本』を引き継いだものといえる。 212頁