荒川洋治の『文芸時評という感想』のこと

 夜半の月は天頂にあった。満月の明かりでもそばに星が見える。
 SIGHT別冊『日本一怖い! ブック・オブ・ザ・イヤー2006』(ロッキング・オン)で高橋源一郎斉藤美奈子の対談が面白い。特に、荒川洋治の『文芸時評という感想』(四月社)をめぐる高橋源一郎の話は納得。この本は、これだけ詰め込まれた内容からいってもお買い得であると。
 そういえば、『文學界』2006年10月号の連載で高橋源一郎小島信夫保坂和志といった〈登場人物〉を〈小説〉に〈登場〉させていたね。冒頭の二ページには笑ってしまった。メタメタのデタラメの面白さが書ける高橋さんは、エライ!
 小島信夫と森敦との関係を巡る荒川さんの文章はいいね。深いところまでたどり着いた文。荒川さんにならって年に五、六回くらい読んでみたいものだ。
 この本で、荒川さんは詩人が書いた小説に、厳しい「感想」を書かれていた。それと理屈っぽい文章を書く小説家にも、煙たがられることを承知で。
 そういうわけで、荒川さんが詩人の田村隆一を追悼する文は、特に印象に残った。
文芸時評という感想