夢枕獏の『宿神』のこと

大根

 昨日、ラジオで「比叡おろし」の歌を聴いて、比叡山を厳冬に雪道をたどって、延暦寺の根本中堂を訪れたことを思い出したのだった。
 今朝の朝日新聞に《新連載「宿神」夢枕獏さん、中沢新一さんと語る》と題して対談があり、夢枕さんが二十年以上前に中沢さんと比叡山に一緒に出かけ、日本の古い神々で、精霊のような宿神について、中沢さんに教えてもらったという冒頭の話から始まる対談を読んだ。
 歌人として、漂泊者として知られる西行。その西行の旅の跡をたどった松尾芭蕉の「奥の細道」をめぐって中沢新一さんが、

中沢 西行の旅の跡をたどった松尾芭蕉の「奥の細道」の序文には、「道祖神のまねきにあひて」ということばがありますが、道祖神もまた宿神の仲間です。
夢枕 文章のレトリックではなくて、芭蕉は宿神のことを知っていたんですね。

 芭蕉といえば、嵐山光三郎の『芭蕉紀行』に、芭蕉が『奥の細道』で訪れた西行ゆかりの「遊行柳」(ゆぎょうやなぎ)の地で、柳が精霊(化物)となった説話を嵐山さんが〈現場検証〉する箇所を思い浮かべる。これも、宿神の仲間?
 この対談で金春禅竹(こんぱるぜんちく)の『明宿集』のことも、翁舞の翁が宿神であり、宿神は宇宙の根源である「隠された王」であるという金春禅竹の主張。うーむ。オモシロイ。
 夢枕獏さんの西行が歌の名手として知られていただけでなく、流鏑馬(やぶさめ)や蹴鞠(けまり)の名人級だったという話が、同時代の「鞠聖」と呼ばれた藤原成通にも教わっていたはずとして宿神につながります、という話も興味深い。