『ウィーンわが夢の町』

南天

 南天の実が赤く熟している。鈴なりだ。目にも鮮やかである。
 夕方、南の空に三日月が昇っていた。高度が三十五度くらいだった。
 蕪村の句に、

既に得し鯨や逃げて月ひとり
三日月も罠にかゝりて枯野哉

 ラジオ深夜便で「ないとガイド」の「読書で豊かに」を聴いた。今月のおすすめ本四冊の紹介であった。今月のゲストは小池昌代さん。荒川洋治さんの時のおすす本も注目しているが・・・。小池さんのおすすめ本から一冊。
 新潮社から出ている『ウィーンわが夢の町』の作者、アンネット・カズエ・ストゥルナートさんの本の話がとても興味深かった。正式の音楽教育を受けていないのに、ウィーン歌劇場のオーディションを受けてオペラ歌手になったひとで、外国にいらして自由奔放に生きて歌に花開いたと語られていた。
 上海での経験や逆境の中でいちずに生きた、日本の戦後史にぴったり重なるような内容の本であるそうだ。詩人になるのが夢であったこともあって、政治、文学に非常に幅広い教養があって、人間的な魅力になっていると。外から見た日本の音楽教育への意見もあって、面白そうである。

ウィーンわが夢の町

ウィーンわが夢の町