年の瀬の用事

枇杷の花

 朝から小雨が降ったり止んだりだったが、夜半に晴れ上がった。満天の星である。天の川にペルセウス座やカシオペヤ座が眺められた。
 年賀状をまだ書いていない。うーむ。年賀状といえば、深沢七郎の「いのちのともしび」という文に、

 一二月になったといっても私は年賀状など出さなくてもいいのだ。年賀状ばかりでなく、ほかに、なんにも、年の瀬の用事などはない。私の書いた「F」小説の結果、世間から遠ざかることになって、去年もことしも旅行していて、そんな日をすごしていてもだれにもあやしまれないでいられるのだ。  『人間滅亡の唄』

 ふーむ。それでも、旅の下宿で人の死んだのを知ると意外に思うときもあるのだったと。先週、セリーヌの『夜の果てへの旅』の翻訳者が亡くなられたという記事を見た。『夜の果ての旅』(旧訳)は生田耕作で、『なしくずしの死』は滝田文彦で読んだのだった。タイトルを「なしくずしの死」と訳したのはなぜか? このことが疑問で国書刊行会から出ていた『なしくずしの死』の解説で調べたことがあった。それが高坂和彦さんの文だったのかな。セリーヌは裕福な家庭の出身というのが意外だね。